カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『ホモサピエンスの涙』(2019年 スウェーデン・ドイツ・ノルウェー合作)

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画像:リンクより

第76回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)。
絵画のような33の短いドラマから歴史や人生が見えてくる。

今朝の1日1映画は『ホモサピエンスの涙』(2019年 スウェーデン・ドイツ・ノルウェー合作)を鑑賞。

この世に絶望し、信じるものを失った牧師。

戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル…悲しみは永遠のように感じられるが、長くは続かない。

これから愛に出会う青年。

陽気な音楽にあわせて踊るティーンエイジャー…幸せはほんの一瞬でも、永遠に心に残り続ける―。

散歩する惑星』『さよなら、人類』などのロイ・アンダーソンが監督を務めた異色のドラマ。

年齢も性別も時代も違う人々が織り成す笑いと涙の物語が、ワンシーンワンカット撮影や手描きの背景画、模型の使用といった独特の手法でつづられていく作品です。

ロイ・アンダーソン監督作品は去年『散歩する惑星』(2000年)を見て、「面白ーい!」ととっても印象に残った監督。

この作品も裏切りませんねー。

面白いといっても、ハラハラドキドキ、この先どうなるのー?! というエンターテインメント映画とは全く逆のもの。

さまざまな男女が織り成す悲喜こもごもの人生模様が1つ2~3分の短いドラマになっていて。

でもショートコントのようなドタバタな動きはなくて、どっちかというと絵画や写真を見ている感覚に近い。

パッとある人の瞬間を切り取ったシチュエーションが現れ、そこに映っている人々の様子、映りこんでいるものから自分なりに状況を読み解いていると、人物が動き出し、そこに軽い状況説明をしてくれるナレーションが入り、その状況が方向づけられる。

美術館で最初自分なりに絵を見て一周した後に、ギャラリートークに参加して絵画の世界をさらに深く知る感覚に近いものがありますね。

実際、場面の中には名画や風刺画からヒントを得ているのもあって、構図も絵画的。

また、街を行きかう人それぞれにも人生がありドラマがあり、という、NHKの街ゆく人々のリアルな声から人生を学ぶ「ガイロク(街録)」や、ひとつの現場にカメラを据え、そこで起きる様々な人間模様を72時間にわたって定点観測する「ドキュメント72時間」のようなテイストもあって。

ああ、みんな人生、いろんなものを抱えてるんだなというのが見えて面白いです。

過去の監督作品に見られる顔を白く塗るデットパン、遠くまで続く奥行きのある「絵」を近くに置いて合成した「だまし絵」による強制遠近法を使う構図というのも踏襲。

色が淡く北欧チックで画も隅々までピントが合っていて非常に綺麗です。

人類の歴史が破壊と想像を繰り返しているように、一人の人間の中にも絶望があれば希望がやって来る。

その瞬間やミクロの視点で見ると絶望的だけど、それをちょっと俯瞰してマクロな視点で見たり、時間を経過すると希望に変わる。

人生は終わりのないドラマかも。

優しい視点があふれている、見終わったあとじんわりする映画です。

↓予告編

 
 

ロイ・アンダーソンが監督作品はこちらも見ました↓ 

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『 踊る大紐育(ニューヨーク)』(1949年 アメリカ)

"Copyright 1949 リンクによる

ジーン・ケリーフランク・シナトラらが歌い踊る!

今朝の1日1映画は『踊る大紐育(ニューヨーク)』(1949年 アメリカ)を鑑賞。

ニューヨークで24時間の休暇をもらった水平ゲイビー(ジーン・ケリー)、チップ(フランク・シナトラ)、オジー(ジュールズ・マンシン)。

はりきって観光に出かけた3人だったが、その途中、ゲイビーがミス地下鉄アイヴィ・スミス(ヴェラ=エレン)に一目惚れ。

みんなで彼女を探すことになった。

そんな中、チップはタクシーの女運転手ヒルディに迫られ、オジーは女学者クレア(アン・ミラー)に見初められる。

一気に恋の花が咲く3人組。だがアイヴィはなかなか見つからない。

限られた時間の中、3つの恋の物語、行方はいかに?

雨に唄えば」の黄金監督コンビ、ジーン・ケリー&スタンリー・ドーネンで贈る傑作ミュージカル。

ウエスト・サイド物語」のレナード・バーンスタインがブロードウェイ用に書いたナンバーにロジャー・イーデンスが新曲を追加。

ジーン・ケリースタンリー・ドーネンが監督し、1949年度アカデミー賞ミュージカル音楽賞に輝いた作品です。

今ジャズの名ピアニスト、ビル・エヴァンスの曲をいろいろ聞いているんですが、名盤『ワルツ・フォー・デビイ』の中にこの映画の元になったミュージカル『On the Town』のナンバーがあり、映画版を見て見ることに。

いやー、楽しいですねー!

3人の水平+3人の女性がニューヨークの自然史博物館、ブルックリン ブリッジ、ロックフェラーセンターなどの名所のセットや街中で、歌にダンスに恋愛に動きまくる!

このミュージカル映画、間やアップショットの切り返しがほぼなく、全身が入るショットでクレーンやドリーなどで滑らかに動きを追い、カットも音楽の節でタイミングつないであるので、一度乗ったら止まらないジェットコースターのような雰囲気がありますね。

歌い踊るだけでなく、落ちるー!みたいな特撮や、人をはねるんじゃないかとヒヤヒヤするカーチェイスも展開し、アクション映画としても面白い。

音楽はミュージカル版では全曲が巨匠バーンスタインがですが、オペラ的で難しいということで大部分が削られロジャー・エデンズの楽曲を採用(そのためバーンスタインは映画をボイコット…)。

1949年にオールカラーで初めて撮影されたミュージカル映画ですが、衣装も色も今見てもすごくきれいですし、古さを感じさせないです。

フランク・シナトラを見るファンの群衆も映りこんでいて、街中のシーンもある意味野外ステージのよう。

基本は「24時間以内に恋愛する!」「警察から逃げろ!」なんですが、いろんな見せ場がモリモリで、終盤で、何で警察から逃げてるんだっけ? と記憶を失ってました(笑)。

それくらい華やかな映画。

日本映画でこんな大都会を舞台にしたミュージカルってあるのかなぁ?

あったらちょっと見てみたい気がします。

↓予告編

 
 

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『老人と海』(1958年 アメリカ)

By Link


アーネスト・ヘミングウェイの同名小説を映像化
孤独や巨大カジキとの死闘

今朝の1日1映画は『老人と海』(1958年 アメリカ)を鑑賞。

老人(スペンサー・トレイシー)はメキシコ湾で少年(フェリペ・パゾ)を伴い、漁師を営んでいた。

少年は老人を尊敬し愛していたが、40日間不漁が続いた為に、親のいいつけで別のボートで漁を手伝う事になってしまう。

それでも老人は毎日一人で漁に出る。

そんなある日、老人は仕掛けた網に信じられない程の重さを感じる。

その瞬間、網にかかったカジキと老人の4日間にわたる死闘が始まった…。

ヘミングウェイのピューリッツア賞受賞小説を映画化。

1958年アカデミー賞 劇・喜劇映画音楽賞、ブルーリボン賞 外国作品賞など各章を受賞した作品です。

原作未読なんですが、やはり小説とは…、映画とは…ということを考えさせられる作品ですね。

釣り、しかも大海で小舟に一人っきりという設定が、小説だと過酷な状況にある主人公の心模様をつづっていくことで主人公に共感し、読み進めることができるんですが、映画はとしては独り言を言わせるか、ナレーションを入れて補うかになり、見せ方としてなかなか難しいというのはあります。

(映画『釣りバカ日誌』が面白いのは「ハマちゃん」と「スーさん」という主人公が2人いて会話をするというのが大きいですよね)

でもそこを海や空、雲、星、月と人間の関係性を美しいショットで見せるとともに天候によって変化させ、カジキ、サメ、ライオン、トビウオ、グンカンドリ、小鳥、シイラカツオノエボシのような動物や魚など、人間以外の動物をたくさん入れ込んでそれらに話しかけ人間の友のようにするという演出がされているので、映像に変化を生み出し、ポイントポイントで引き込まれるところはあります。

中盤からは感情を煽る音楽が加わり映画『ジョーズ』の様相が。

合成やフィルターを使って一人の老人が鮫や自分自身と闘う姿を上手く描いていて。

人間が一人でできることって何? とか、欲ばると痛い目にあうとか、いろんな教訓が得られる内容。

だからこそ原作が永遠のベストセラーなんでしょうね。

PS:U-NEXTは本も読めるんですが(なんと雑誌は読み放題!)『老人と海』は翻訳者違いで5冊もある!

原作も読んだ方が倍楽しめそうです。

↓予告編

 
 

老人役のスペンサー・トレイシー主演映画はこれらも見ました↓ いつもご覧いただきありがとうございます♪

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『風立ちぬ』(1976年 日本)

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画像:リンクより

堀辰雄の名作小説を三浦友和×山口百恵で描く

今朝の1日1映画は『風立ちぬ』(1976年 日本)を鑑賞。

昭和17年、軽井沢。

病気の療養中である少女、節子(山口百恵)の家にたくさんの友人たちが集まるが、その中のひとり、達郎(三浦友和)は節子にひそかに好意を寄せていた。

節子にお見合いの話があると知り、不安になる達郎だったが、友人たちが案じてお見合いは破談となる。

そのころ、戦局は悪化し、達郎の友人が外地に向かう一方、節子にまた縁談の話が持ち上がる。

いよいよ意を決した達郎は節子に結婚を申し込もうとするが、達郎の友人の戦死を聞き…。

三浦友和×山口百恵というゴールデンコンビが共演した純愛映画の第5作。

堀辰雄の同名小説を再映画化。

軽井沢を舞台に薄幸の少女と彼女を最後まで見守る青年の愛を描いた作品です。

原作未読です。

なるほどー。

若い恋する二人が戦争によって引き裂かれてしまうという物語は、個人的に号泣したフランス映画『シェルブールの雨傘』(1964)と似ているんですが、こちらはそこまでの共感や感情が湧き上がらない。

やっぱりギャップの描き方かなぁなんて思います。

設定としては、結核という当時の不治の病の少女と徴兵が迫る誠実な青年の物語で、2人とも生きたいのに生きられないかもしれない運命という皮肉はあるんですが、割とどちらも裕福な家庭の育ちなので、格差恋愛ではないし、2人で駆け落ちしてハングリーに生きていく力がある感じではない。

感情とセリフがイコールで、顔で笑って心で泣いてのような感情のギャップは描かれていないので、悲しい運命の2人を見届けるような展開となっています。

2人が喧嘩したり、嘘が災いしたりなど、もっと葛藤を生み出すような感情的に生き生きとした場面や感情に寄り添った音楽があると感動が深いのかも。

その代わり節子の父親・水沢欣吾役の芦田伸介さんがいい演技を見せてくれていて。

また、結城達郎の先輩、大浦茂春役の松平健さんが元気印みたいな役どころなのに徴兵されて…という、最大のギャップを生み出しています。

当時の人気スターということで、1976年(昭和51年)の邦画配給収入ランキングの第6位となった作品なので、いい作品なのは間違いない。

美しい主役に、演技がきらりと光る脇役。

そういう意味ではバランスの取れた映画ですね。

PS:『風立ちぬ』(ジブリ)や『君の名は。』(新海誠監督)など、最近のアニメには昔の映画やドラマのタイトルと同じだけど内容は全く違うというのがありますね。広い年齢層をターゲットにしているのかな。

↓予告編

 
 

三浦友和×山口百恵カップルの映画はこちらも見ました↓

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『メイク・マイン・ミュージック』(1946年 アメリカ)

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戦後すぐにこのクオリティーはさすがディズニー。
短編10話からなるミュージカルアニメーション。

今朝の1日1映画は『メイク・マイン・ミュージック』(1946年 アメリカ)を鑑賞。

1946年にウォルト・ディズニーが制作し、RKOピクチャーズが公開したアニメーションミュージカルのアンソロジー映画。

月明かりに照らされてきらめく青いさざ波の中を、2羽のサギがゆっくりと飛んでいく(「青いさざなみ」)。

勇敢な少年・ピーターは、小鳥のサーシャにネコのイワン、アヒルのソニアを引き連れてオオカミ退治に出発する(「ピーターとおおかみ」)など、独立した計10話が展開します。

ピーター・バラカンさん監修の音楽映画が後を引いていまして、音楽系の映画が見たくて鑑賞(見たのは吹き替え版)。

制作された1946年って、日本は戦後すぐの焼野原ですよ。

そんな時期にアメリカではこんなカラフルで楽しい映画が作られているという、いろんな意味で違いを感じますよね。

第二次世界大戦中、日本ではあらゆる映画スタッフが軍隊に召集されていたように、アメリカでも同じことが起きていて、長編映画を作るのは難しいので、未完成のストーリーやアイデアを合わせて作るという方法で作られた作品。

人間や動物たちが生きているように滑らかに動くその手法はさすがディズニー。

キャラクターたちが曲のテンポに合わせて歩いたり物にぶつかったりというのも、今のミュージックビデオの編集点(人の動きや曲のテンポに合わせてカットする)の元祖ともいうべき編集が。

曲が先にあってそれに合わせて作画するのか、それとも作画してそれに合わせて演奏しているのかと想像してしまうんですが、当たり前のことが実はすごい技術でもって作られていることに感心させられてしまいます。

歌やダンスも当時の人気アーティストが結集していると思われるんですが、「みんなジャズがお好き」という話ではベニー・グッドマンオーケストラが参加していて、お尻を突き出してめかしこんでジャズでダンスしまくる若者の様子が鉛筆で書き足されていきながら進む。

「君去りし後」という話では楽器たちが動き出す。

それらがなんだかすべてシャレているんですよねぇ。

その他の話も子供が見ても分かるし、大人が見ても楽しめる内容で。

個人的には野球の話が面白かったです。

パブリックドメインの関係でディズニーの公式ソフトでの販売がされていなく、ディズニープラスでも配信されていないという作品。

華やかな歌や音楽がステージを見ているような優雅な気持ちにさせてくれます。

↓予告編

 

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竹原市(広島県)映画ゆかりの地&ロケ地めぐり+αの旅 その1

いつもご覧いただきありがとうございます。
行楽シーズン、どこかお出かけなさいましたか?

私は先週、竹原(広島県)へ。
竹原は小京都と呼ばれる古い町並みが魅力なんですが、いろんな映画のロケ地になっていて、映画人に愛される町でもあります。
今回も映画ゆかりの地+αということで3回に分けてご紹介します!
まずは、「街」編。

 

広島市内から高速バスに揺られること約1時間30分で到着。
広島空港からだとタクシーで25分という近さ!
新幹線だと三原駅からJR呉線で約40分です。

江戸時代前期に塩や酒づくりで栄えた豪商のお屋敷や由緒あるお寺が集まっている竹原。
街並み保存地区にはこんな石畳の美しい町並みが続きます。
「竹原」だけに竹の工芸品が有名。
まちなみ竹工房では「竹細工体験」で簡単な竹工芸品が作れますよ(所要時間40分~1時間)。

 


バスを「道の駅たけはら」で降りると、まず、『るろうに剣心 最終章 the Final』(2021年)のポスターが。

 


ここ竹原の街並み保存地区で撮影されたんです。
竹原市様という佐藤健さん、新田真剣佑さん、江口洋介さんのサインが!
撮影前にはたしかエキストラ募集とかもしてたんですよね…。(私は不参加)
るろうに剣心は1しか見ていなくて…。ぜひこの最終章も見てみたいと思ってます。

 

 


はい、猫、大好きです。
旅の最初から猫に会うのは縁起がよいかも。
この子は子猫ちゃんで、人間よりも虫の方が興味があるらしく、振り向いてもらえませんでした(泣)。

 


それではお屋敷めぐりのスタート。
4か所のお屋敷が見学できる「たけはら町並み保存地区周遊券」を買うと、1,200円のところが900円になってお得ということで、さっそく購入して周ることに。

まずは、「旧笠井邸」へ。
塩田の浜主の家として明治5年に建てられました。
玄関に入ると、奥のお庭が見えて気持ちよいです。

 


窓の細やかな組子が美しいのと、季節の花が飾られた竹工芸の花器も素敵ですよね。

 


奥の部屋には紡ぎ車や機織り機も。今も使えそうな雰囲気。

 


2階へ上がると、竹原の街並みが見渡せます。

 

青い空に白い壁。
気持ちいい!


ずっと奥まで石畳が続いてます。


2階の立派な梁(はり)には建設する際の指示的な文字が。
昔の人ってほんと字が達筆ですよねぇ。
私は自分が書いた字が年々下手になって読解できなくなっています(苦笑)。

 


竹原はアニメ『たまゆら』の舞台になっていて、聖地巡礼で来ているらしき方々もちらほら。
このアニメ、竹原のお店1件1件までアニメの中に登場するくらい竹原推しの作品らしいんですけど、未見です。
このアニメを見たらさらに竹原が楽しくなること間違いなしでしょうね。


次にやってきたのが「地蔵堂」。
山手にある西方寺に属すそう。
塩田業が盛んだった頃、上市・下市と呼ばれていた地区の守り神として祭られていましたが1602年に火災で焼失。現在のお堂は昭和2年建てられたものです。

 

昭和2年建設でも95年前だから古いっていえば古いですけどね。


このお地蔵さんの顔がねー、いいんですよ。
素朴なんだけど、味がある。
このお地蔵さんになら、毎日会いに行きたいです。


街並みが明治や大正の雰囲気なので、こういう看板が新しく見えるんですが、これはこれでレトロでいい雰囲気。
右下に自転車の方が写っていますが、自転車で観光している方も多いです。
というのも、愛媛県広島県の海峡を渡る瀬戸内しまなみ海道にある「サイクリングロード」から近いというのがありまして。
本格的なロードバイク&ファッションの方が古い町並みとマッチしています。


少し歩くと、国登録有形文化財「旧日の丸写真館」が見えてきます。
竹原在住の大工、吉名市次郎によって昭和7年頃に建てられた写真館。
窓等の開口部の配置は建築当初の状態をよく保ち、昭和初期の建築技術の高さを伝えています。


今も経営しているのかどうか分からないんですが、1階のショーウインドウにはレトロなカメラとレトロな人形が。
古くからやっているお店のショーウインドウって、え?っていうようなお店の商売とは全然関係ないものが飾られている確率って割と多いと思うんですが、あれを眺めるの、好きなんですよねぇ。
昭和レトロというか、カオスになっているお店、多いですよねぇ。


その向かいには青い犬?の巨大オブジェが。
若いアーティストさんが作ったようなんですけどね。
古い街に新しいアートが共存しているのも面白いです。

次にその近くのお屋敷「旧森川家住宅」を見学。

 

竹原塩田の1番浜跡地に建てられ、大正5年頃移築された豪邸。
主屋の他に離れ座敷・茶室・土蔵などがあり、茶室は小堀遠州流の茶人、不二庵(ふじあん)が設計したそう。
竹原市重要文化財です。


映画『ジャズ大名』のどんちゃん騒ぎをしている大部屋のシーンとか、『西鶴一代女』の次々襖を開けながら言い寄る武士のシーンとかを思い出させてくれるくらい広ーい!襖を開けても開けても次々に部屋が!っていうのをやってみたいです。

お庭が美しい。
お庭の設計士って、針葉樹と落葉樹の配置や、季節や時間差で起こる紅葉や落葉の色あいとかを見ながら配置していくんでしょうね。絶妙なお仕事です。
お茶会もたびたび開かれているので、その時にまた来たいなぁ。

置いてある家具も素敵で、机の彫刻とか、角には皮をカービングで模様を付けたものが施してあって個性的です。

所々に、庭に咲いているのを積んできましたという感じのお花が生けてあるんですが、それも素敵なんですよね。

昔ながらのかまども。
これでご飯を炊くと美味しいに違いない。

 

町並み保存地区の中にある代表的な商家の建物「旧松阪家住宅」。
江戸時代末期、文政の頃に建てられ、明治12年に改築。家主は製塩業や醸造業をしていたようです。
屋根の黄色がアクセントになっています。

 

昔のままの書。

当時の戸袋の絵もガラスケースに入っているのを見ることができます。
なんと江戸時代初期の狩野派の絵師、狩野探幽の作とのこと。
上手いはずです!


この屋敷を会場として、まちなかアート展 超絶技巧作品展示「脅威のリアリズム」展が開催中(2022年12月13日(火)まで/水曜日休)。
立体から平面まで本物?と見間違うぐらいリアルな作品が並べてあります。

この女子高生、すんごいリアルですよねー。

この立体作品も、怖いぐらい人間そのもので今にも動き出しそう。
広島市立大学ゆかりのアーティスト6人を含めた13人を展示。
広島市立大学芸術学部には教授の専門として細密画の流れがあって、卒業生にはこういう超絶技巧の作家さんが結構いらっしゃいます。
屋敷で超絶技巧を楽しむ。なんとも代えがたいひと時です。

 

この建物も何の建物か分からないんですが古そう。

 


河岸を散歩すると、源平2氏から徳川氏までの武家盛衰史を書いて日本史上のベストセラーとなった『日本外史』の著者、頼 山陽(らい・さんよう)先生の銅像が。
頼 山陽は大坂生れの江戸時代後期の歴史家・思想家・漢詩人・文人
山陽生誕200周年を記念し1980年に建てられました。
竹原には祖父の頼惟清が紺屋を営んでいた家があり、父の頼春水が幼少期に暮らしており、頼山陽も何度か訪れ詩を残しています。


その下には、かわいらしいたけのこをかたどったポールが。
あなたは「たけのこの里」派ですか?
私は「きのこの山」派です(笑)。


そして「観光地の顔入れ写真看板ではもれなく顔を入れて写真を撮る」派です。
(妻の梨影になっていますが、同系色でカバー 笑)



街並み保存地区の中心に戻り、先日見た大林宣彦監督映画『時をかける少女』(1983年)のロケ地へ。
醤油屋の息子役の尾美としのりさんの役名は、小説版では浅倉吾朗ですが、映画ではロケ地にあるこの醤油屋さんの看板をそのまま使いたいということで、役名を堀川吾朗にチェンジ。
お醤油の樽を混ぜたり、洗ったりするシーンはこのお醤油屋さんだったんですね。


映画の中に出てくる看板が!
「堀川醤油」は大正8年の創業以来、90年以上変わらぬ味を守り続けたこだわりの醤油。塩辛さに角が無くほんのり甘口の味わい豊かな醤油に仕上げているそうです。


お隣には、その醤油屋さんが経営するお好み焼き屋さんで、蔵を改装して作られた「ほり川」が。
竹原にある3蔵(竹鶴酒造・藤井酒造・中尾醸造)で造られた純米吟醸酒粕を生地に練り込んであるそうで、どんな味がするのか食べてみたいんですけどね。
今回はお店の中には行きませんでしたが、『時をかける少女』の台本があって、見ることができるそうです。
食べログはこちら↓

tabelog.com


次は「今井政之展示館」へ。
今井政之氏は象嵌法の第一人者で、世界的にも有名な日本陶芸界の重鎮の一人。
先日見に行った広島市内の美術館にも収蔵作品として展示してありました。
象嵌(ぞうがん)は工芸技法のひとつで、金属や木材、陶磁などに模様を彫り、そのくぼみに別な素材をはめ込む加飾法。
撮影NGだったので写真は撮ってないんですが、その絵は魚のモチーフが多く、すんごい手が込んでいます。
現在は息子の今井眞正さん、孫の今井完眞さんとともに親子3代でそれぞれ違った作風の作品を創作されています。


豊山窯」と茶室「松聲軒」「柳慶亭」が敷地内にあって、お庭も美しいです。


その向かいに、「酒蔵交流館」なるものが!
お酒やぐい飲みやお銚子などのお酒グッズが売っています。
藤井酒造の利き酒ができると聞いていたんですが、コロナの影響からかやっていませんでした。残念…。

 


竹原ロケ映画はこの映画も。
『吟ずる者たち』(2021年 油谷誠至監督)です。
主演は比嘉愛未さん。
日本酒造りが盛んな広島の町で日本で初めて吟醸酒をつくった三浦仙三郎の酒づくりの思いに触発され、酒づくりの道を歩み始める女性の姿を描いた人間ドラマです。
この映画も劇場で見よう見ようと思いつつ見れず…。
いい作品らしんですけどね(お酒好きにはたまらないらしい)。
まだDVDや配信がされていないのでいつかまた地元の劇場でやらないかな…とひそかに期待しています。



しばらく歩くと不思議な形の屋根をしたお堂が。
これが映画『時をかける少女』(1983年)の名シーンとなった「胡堂」の横からの姿です。


正面から見たのがこちら。
和子(原田知世)が、朝の通学中に瓦が落ちるのを予知して、「危ない!」と吾朗(尾美としのり)を押して瓦から守るシーン。


撮影時は扉を閉めてありますが、普段は開けてあるとのこと。
あの瓦が落ちてくる部分だけセットで発泡スチロールの瓦でやったんだと思います。
塩田業が盛んだった頃、この地区は上市・下市と呼ばれており、胡堂は上市の商業の守り神として祭られていました。
現在は毎年10月に祭礼が行われているそう。


横の穴の模様が手裏剣みたいで面白い。


今でもお参りしたくなる風情がありますね。


胡堂の横を見上げると、色づく山。


少し階段を上ると、照蓮寺(浄土真宗本願寺派)が。
割と大きなお寺です。
本堂、経蔵、鐘楼門、庫裏などを備え、名園“小祇園”も。
古くは定林寺と称し曹洞宗の禅寺だったそうですが、1603年、宗具が入山して真宗に改宗、西本願寺派に。
境内には頼春風一族、塩谷志師、石井豊洲、木村好賢、エレキテルの初期実験者 橋本曇斉の墓もあります。


屋根を見上げると立派な鬼瓦!
厄除けにご利益がありそうですね。

 

街に戻り「竹原市歴史民俗資料館」へ。
昭和の初期、図書館として建てられたレトロモダンな洋風建築。
もともとは江戸時代中期の儒学者、塩谷道碩の旧宅跡で、頼山陽の叔父、春風が志を受け継いで学問所にしていたそう。
中には竹原に繁栄をもたらした製塩業の歴史や竹鶴政孝に関する資料などが展示してあります。
塩づくりの製法など、ブラタモリが好きな方は楽しめる展示ですよ。


街に戻り、「郵便局跡」へ。
明治4年に建てられ、明治7年に郵便取扱所として使われるように。
この隣のあたりが頼山陽のおじいさんのおうち「賴惟清旧宅」で、見学することができました。


楠神社の巨大クスノキ広島県の天然記念物に指定。
樹高32m、目通り幹囲8.6mで県内2番目の大きさだそう。
樹齢ってどのくらいなんでしょうね。


最後にNHK連続ドラマ『マッサン』で有名になった「竹鶴酒造」に。
ニッカウヰスキーの創業者で、「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝の生家です。
行った時間が早かったのか、閉まっていて、後で見ると開いていたんですが、お酒の小売り販売もあるのかな(お酒は「道の駅たけはら」でも購入できます)。
この町並みに屋敷を改装してつくったおしゃれホテル「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」が点在しているんですが、そちらでは竹原の美味しいお料理とともにお酒を味わうことができます。

 


こちらが『マッサン』の竹鶴政孝&竹鶴リタ夫妻の銅像

「よいウヰスキーづくりにトリックはない」。
ごもっとも。
何事もそうですもんね。
ありがたいお言葉を心に刻みます。

竹原市広島県)映画ゆかりの地&ロケ地めぐり+αの旅 その1は以上です。
お越しの際には“うさぎ島”として有名な「大久野島」も竹原から近いので、一緒に観光するのも楽しいですよ!

長々とご覧いただきありがとうございます。
その2,その3もまた近々!

 
 

 

 

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【レポ】『アメリカン・エピック』エピソード3 多民族音楽国家アメリカ(2017年 アメリカ)/「ピーター・バラカンが選んだ音楽映画フェスティヴァル」上映+トーク

超貴重な音楽版“映像の世紀”を、監修のピーター・バラカンさんのトークとともに味わう

今日の1日1映画は、昨日見た広島市映像文化ライブラリーで開催中の「Peter Barakan’s Music Film Festival 2022 ピーター・バラカンが選んだ音楽映画フェスティヴァル」から日本初公開作品『アメリカン・エピック』(2017年 アメリカ)の「エピソード3 多民族音楽国家アメリカ」を。

この作品は、今「ルーツ・ミュージック」と呼んでいる音楽の大部分ができた1920年代後半の貴重な音源&フィルムを編集し、記念碑的なレコードがどのようにできたかを時代背景と共に伝える4話のドキュメンタリー・シリーズ。

音楽評論家でラジオDJピーター・バラカンさんが字幕監修していて、今回はバラカンさんのトークも開催されました。

開演15分前に到着したんですが、私がラストの1席で、滑り込みセーフ!(私のあとの入れなかった方々、すみません…)

 

満席です(本来は168席ありますが、コロナ対策のため84席)。

子どもの頃からラジオから流れてくるバラカンさんのお話と選曲に影響を受けて育った私。

改めて音楽映画とピーター・バラカンさんの人気を実感します。

今回見たエピソード3は超貴重な映像がたくさん!

昔からネイティブ・アメリカンの祭事として行われていたホピ族の太鼓+踊り。

ホピ種族以外には誰にも見られてはいけなかった神聖なる踊りが、映像や録音が発明されることによって、1920年代に観光として、レコードとして、それをある意味商品化しようと群がった人々によって公開されることに。

皮肉にも、そのことによって文化的に後世に残り、今、我々がこうやって映画となって見ているのでありがたいことですけどね。

その他ハワイアン(スティール・ギターは落ちていたボルトから発明された)、ケイジャン、ラテンなど、時代を築いた知られざるミュージシャンたちが次々と登場し、彼らの子孫の証言などとともに当時の様子をひも解いていく。

その歌声や演奏を約100年経った今聞けるなんて、本当に夢のようです。

しかも1920年代の映像なのに、とても綺麗。

今も生きているんじゃないかと思えるくらい、楽器を弾き&歌いながら彼らがフィルムの中から出てきそうな臨場感があります。

当時のレコードに関しては、原盤の金属が戦争の物資として回収されていて、ほとんど残ってないそう。

なので、音源としても非常に貴重です。

1977年に打ち上げられた宇宙探査機ボイジャー号の中には「ゴールデンレコード」という世界の音楽を記した原盤を搭載。

地球外知的生命体や未来の人類が見つけて解読することを期待して打ち上げられているんですね。

国や人種に関係なく人類が生み出した音楽について過去から未来までを描いた壮大な作品で、見終わって、今この時代に生きていることのありがたさをじんわり感じる内容でした。

映画が終わってからのピーター・バラカンさんのトークも貴重なエピソードが。

1952年にコレクターのハリー・スミスが注目するまで、1920年代の音楽には誰も注目しなかったとバラカンさん。

「オールディーズとして昔の音楽に着目するブームは70年代以降のこと。1920~30年代、黎明期の78rpmのレコード音源や楽器がこうして見られるこの映画は実に貴重。ぜひ大学などの教育現場で利用してほしい」とこのこと。

「映画の中に出てくる当時のレーベル(レコードの真ん中のラベル)の英語表記を見ると、スペルが間違っている物がほとんど。元々表記されたものがなく「聞き書き」だからで、ミシシッピジョン・ハート(“Mississippi" John Smith Hurt)だけ合っていました(笑)」と裏話も。

その他、バラカンさん、上映会場であるこの広島市映像文化ライブラリーの地下倉庫を見学。

 

「貴重なビデオがたくさんあって、僕が子供の時に見たモントレー・ポップ・フェスティバル(1967年6月16日~18日に開催された米カルフォルニアモントレーでの大規模ロックコンサート)のビデオもありました。「レディ・ステディ・ゴー」(イギリスのITVで放送された初のロック/ポップ音楽専門番組。ダイジェスト版ビデオかな)も。βマックスですけど」(会場笑)

「古いレコードやカセットテープなどもたくさんあって機材もあるので申請すれば見ることができます。若干料金は掛かりますが、ぜひ見て&聞いてみてください」とのこと。

私も地下倉庫を見学させていただいたことがあるんですが、貴重なフィルムはもちろん、映画の台本などもあり、もうお宝級。

実際、『忠次旅日記』(1927年 伊藤大輔監督)は、長らくフィルムが紛失し「幻の映画」となっていましたが、1991年、この広島市映像文化ライブラリーで約89分版が発見され日の目を見ることになり、現在修復されたデジタル復元・再染色版がリリースされています。

よくフィルムをデジタルなどの最新の形式に買い替えたら…みたいな話がありますが、そのためには上映機器などのハード面も数年ごとに買い替える必要があり、逆にコストがかかる。

古いものを古いまま保存していくことの大切さもありますね。

 

トーク後、↑この本や映画祭のTシャツ購入者にはバラカンさんのサイン会もあり長蛇の列が。

映像文化ライブラリーの夜の部での満席は珍しいと知り合いの会場スタッフもうれしい悲鳴を上げていました。

映像文化ライブラリーでは11月13日(日)まで開催(全国では地域によって現在公開中/公開予定/公開終了)。

来年も開催するそうなので、映画で知られざる音楽の世界を堪能してみてはいかかがでしょうか。

Peter Barakan’s Music Film Festival 2022 ピーター・バラカンが選んだ音楽映画フェスティヴァル」公式サイト↓

pbmff.jp

↓予告編

 
 

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