『ホモサピエンスの涙』(2019年 スウェーデン・ドイツ・ノルウェー合作)
画像:リンクより
第76回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)。
絵画のような33の短いドラマから歴史や人生が見えてくる。
今朝の1日1映画は『ホモサピエンスの涙』(2019年 スウェーデン・ドイツ・ノルウェー合作)を鑑賞。
この世に絶望し、信じるものを失った牧師。
戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル…悲しみは永遠のように感じられるが、長くは続かない。
これから愛に出会う青年。
陽気な音楽にあわせて踊るティーンエイジャー…幸せはほんの一瞬でも、永遠に心に残り続ける―。
『散歩する惑星』『さよなら、人類』などのロイ・アンダーソンが監督を務めた異色のドラマ。
年齢も性別も時代も違う人々が織り成す笑いと涙の物語が、ワンシーンワンカット撮影や手描きの背景画、模型の使用といった独特の手法でつづられていく作品です。
ロイ・アンダーソン監督作品は去年『散歩する惑星』(2000年)を見て、「面白ーい!」ととっても印象に残った監督。
この作品も裏切りませんねー。
面白いといっても、ハラハラドキドキ、この先どうなるのー?! というエンターテインメント映画とは全く逆のもの。
さまざまな男女が織り成す悲喜こもごもの人生模様が1つ2~3分の短いドラマになっていて。
でもショートコントのようなドタバタな動きはなくて、どっちかというと絵画や写真を見ている感覚に近い。
パッとある人の瞬間を切り取ったシチュエーションが現れ、そこに映っている人々の様子、映りこんでいるものから自分なりに状況を読み解いていると、人物が動き出し、そこに軽い状況説明をしてくれるナレーションが入り、その状況が方向づけられる。
美術館で最初自分なりに絵を見て一周した後に、ギャラリートークに参加して絵画の世界をさらに深く知る感覚に近いものがありますね。
実際、場面の中には名画や風刺画からヒントを得ているのもあって、構図も絵画的。
また、街を行きかう人それぞれにも人生がありドラマがあり、という、NHKの街ゆく人々のリアルな声から人生を学ぶ「ガイロク(街録)」や、ひとつの現場にカメラを据え、そこで起きる様々な人間模様を72時間にわたって定点観測する「ドキュメント72時間」のようなテイストもあって。
ああ、みんな人生、いろんなものを抱えてるんだなというのが見えて面白いです。
過去の監督作品に見られる顔を白く塗るデットパン、遠くまで続く奥行きのある「絵」を近くに置いて合成した「だまし絵」による強制遠近法を使う構図というのも踏襲。
色が淡く北欧チックで画も隅々までピントが合っていて非常に綺麗です。
人類の歴史が破壊と想像を繰り返しているように、一人の人間の中にも絶望があれば希望がやって来る。
その瞬間やミクロの視点で見ると絶望的だけど、それをちょっと俯瞰してマクロな視点で見たり、時間を経過すると希望に変わる。
人生は終わりのないドラマかも。
優しい視点があふれている、見終わったあとじんわりする映画です。
↓予告編
ロイ・アンダーソンが監督作品はこちらも見ました↓
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