『雨月物語』(1953年 日本)
ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞
溝口健二監督の幽玄な映像美
今朝の1日1映画は『雨月物語』(1953年 日本)を鑑賞。
戦国時代、琵琶湖北岸の村。
戦乱の到来を契機に、大商いを目論む陶器の名工・源十郎(森雅之)と、息子と家族3人で貧しくともささやかな幸せを望む妻の宮木(田中絹代)。
そして、侍として立身出世を夢見る源十郎の弟・藤兵衛(小沢栄)とその妻(水戸光子)。
やがて源十郎と藤兵衛はそれぞれの妻を故郷に残して都に出るが、源十郎はそこで怪しい美女(京マチ子)に出会い…。
上田秋成の読本「雨月物語」に収録された「浅茅が宿」「蛇性の婬」の2編にモーパッサンの短編「勲章」を加え、川口松太郎と依田義賢が脚色、宮川一夫が撮影。
巨匠・溝口健二の代表作で、戦乱の中で世俗の欲に翻弄される人々を幽玄な映像美で描き、多くの映像作家に影響を与えた世界的名作です。
アンドレイ・タルコフスキー、マーティン・スコセッシの好きな映画としても有名。
なんかタイトルからして古典ぽいし、難しいのかなーと、今まで見てなかったんですが、見てみると全く逆で、超分かりやすい!
セリフも外ロケ(アフレコ?)&室内(同録)共にとても聞き取りやすく、ミドルショット+長回しの中にもアップショットが所々入り、溝口監督作品ですが誰が誰だか認識できます(他の作品ではこれは誰だ?と思うことが多々あり…)。
印象は、「日本昔ばなし」みたいなお話だなと。
お金や美女に目がくらむと、もっと大切なものを失いますよという。
溝口作品の特徴として挙げられるのが「女性の生き方」。
封建的な社会の犠牲となる女性が描かれますが、この作品では精神的・母性的なヒロインとして主人公の妻に田中絹代を、官能的・魔女的な誘惑者として姫・若狭に京マチ子を配置し、戦乱時の悲劇をそれぞれの立場の女性が演じています。
また主人公の弟夫婦の存在も対比的で。
精神的・母性的な気高い存在から、しょうがなく官能的・魔女的な社会的に弱い立場の存在へ落ちぶれていく女性も描かれていて、見ていて切ないんですよね。
音楽は雅楽やパーカションが多用され、霊的な予言者の存在や霧掛かった屋敷など、日本だと夢幻能、西洋だとシェイクスピアなどの古典劇のような構成&世界観が。
古典を踏襲しつつも、滑らかに人物を追うトラッキングショットやクレーン、身分差を高低差で表現するなど、溝口映画ならではの質感が加わり、見ていて感情がスーッと移行し、いつの間にか映画の世界に連れていかれていることに気づかされます。
俳優さんがセリフを吐くときに白い息が出ていて、スタジオ撮影とはいえ相当寒い中での撮影だったのではないかと想像。
先日跡地を見に行った「大映京都撮影所」(見に行った時の記事は→こちら)で撮影されていて、公開が3月なので、冬に撮影したんでしょうね。
冬の京都の寒さを映画から知ることができます。
海外でも映画史上の最高傑作のひとつとして高く評価されているというこの作品。
69年経った今見ても名作はやはり面白いです。
↓予告編
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