『黄金の腕』(1955年 アメリカ)
リンクによる
「人は誰でも誰かにすがって生きてるわ」(映画より)
タイトルバック&音楽にしびれる1作
今朝の1日1映画は『黄金の腕』(1955年 アメリカ)を鑑賞。
“黄金の腕”とあだ名されるカードの名手フランキー(フランク・シナトラ)。
6ヶ月の療養所生活を終え、車椅子生活の妻ザッシュが待つ古巣の町に戻ってきた。
フランキーは博奕打の暮らしに戻りたくはなく、施設で持ち前のリズム感を生かしドラムの修行を受けていたが、ザッシュや売人のルイも目は冷ややかだった。
やがて、フランキーにオーディションの口がかかり、彼に好意を抱く酒場のホステス、モリーの部屋で練習を始めるのだったが…。
麻薬中毒者に扮するシナトラが迫真の演技で魅せる、オットー・プレミンジャー監督によるサスペンス・ドラマです。
内容は深刻ですが、デザインや音楽は超クール!
冒頭のタイトルクレジット+ホーンがドーンと来るゴージャスなジャズにノックアウトですわ。
タイトルバックはアニメーションになっているんですが、ポスターデザインも含めて手掛けたのはソール・バス。
白い四角がピューっと動くんですが、シンプルなのに印象に残るんですよね。
この映画のポスターは、プレミア誌によって「史上最高の25の映画ポスター」の一つに選出。
この作品をきっかけに、映画タイトルバックに新時代をもたらし、『八十日間世界一周』(1956年)、『ウエスト・サイド物語』(1961年)など、次々とタイトルバックを手掛けていく売れっ子デザイナーになっていきます。
また、映画音楽が初めて本格的にモダン・ジャズを取り入れたのもこの作品で、作品の世界観をグイーンと押し上げている。
音楽映画といっても過言ではない気もします。
お話自体は麻薬中毒の主人公を取り巻く話で、決して明るいものではないんですが、これにサスペンス要素が「えーっ!」というくらい意外性のある形で入り込み、アッと言わされる。
特に車椅子生活の妻ザッシュ、いい人なのか…悪い人なのか…。
謎を残しつつもラストに向かってバタバタバターっと収束していきます。
技法として印象的なのはとにかくどこまでも追っていくクレーン。
クレーンといえば溝口健二監督の得意とするところですが、もしかして溝口監督、脇に隠れてる?っていうくらい、人物を追います。
絶妙なフレーミングも良くて、追い切った後に不安な表情をアップでとらえたり、手前と奥で人物を別れさせて余韻を残したりというカット終わりが、次のカットへの推進力となる。
見ていて非常にスムーズです。
近寄ったときにカメラの影が入り込んでしまい、それを内心ヤバイと思ったのか、徐々に影が薄くなるというシーンも。
カメラさんの内心が透けて見えるのも面白いです。
キャスティングだと、男女やマフィアの話ではありますが、主人公をそっと支える眼鏡男(のび太みたいな)の存在がいい。
影の主役のような気がします。
また犬がところどころに出てきてかわいいんですが、ビールを飲ますんですよ。
依存症がテーマの話だけど、犬は許されるらしい…。
今の時代だと動物愛護の観点からワーワー言われそうですけどもね。
トータルで見どころがたくさんある映画です。
PS:麻薬に溺れるシーンで、麻薬を注射器に仕込むまでのシーンは映り、打つシーンは腕ではなく顔のアップになっていて、当時の承認コード(R指定的な)をクリアしているんですが、私たちも自主映画ではありますが、公に出品等する場合はそういうシーンをカットしないといけないことがあって台本を変えた経験があり、共感してしまいました。カットしても伝わるからいいんですけどね。
↓予告編
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