『人間の條件』第一部 純愛篇/第二部 激怒篇(1959年 日本)
トータル9時間31分!
仲代達矢の転機となった社会派映画の名作
今朝の1日1映画は『人間の條件』の第一部 純愛篇と第二部 激怒篇(1959年 日本)を昨日と今日2日間に渡って鑑賞。
戦争を嫌い妻(新珠三千代)を愛する梶(仲代達矢)は、招集を免除してもらう代わりに、満州の鉱山で労務管理を行うことになった。
しかし現場では現地人に過酷な労働を強制し、さらに彼らの報酬を勝手にピンハネして私腹を肥やす現場監督がいた。
梶は労働環境の改善を図り、鉱山は目標であった生産増強を達成することができた。
しかし今度は“特殊工人”と呼ばれる中国人捕虜600人が送り込まれ、電気の流れる鉄条網の中で労働させることになり…。
五味川純平の同名ベストセラー小説を、小林正樹が全6部で描ききった超大作です。
この作品、映像文化ライブラリーで上映されるたび、いつかは見たいと思いつつも、全6部作でトータル9時間31分という長編で、重い内容だし、いつ見ようかと尻込みしていたんですが、ようやく見てみました。
捕虜を扱う描写は壮絶。
原作者・五味川純平、監督の小林正樹ともに旧満州での戦争体験があり、それをもとに描かれているので、中国人捕虜に対する暴力や憲兵からの仕打ちは相当リアルな内容なんじゃないかと思います。
だけど「愛」のドラマでもある。
戦争という国の目的を達成するために、夫婦や恋人など愛する人との幸せを犠牲にしなくてはならない。
主人公の夫婦愛や中国人同士の愛が引き裂かれていく様子はドラマティックで、感情移入してしまいますね。
労務管理をする上での疑問や妻との間で葛藤する姿を仲代達矢が大きな目をさらにひん剥きながら演じていて、その表情の奥にある誠実さ熱心さが伝わってきてものすごい説得力があります。
主要中国人キャストはみんな日本人で、淡島千景さんや有馬稲子さんなどが扮しているんですが、みなさん流暢な中国語で演じているんですよね。
中国語って言語的に音域が広くて、表情のある言葉ではあるんですが、外国語に感情を載せていく作業は難しそうで、どうやって役作りをしたんだろうと感心させられます。
それにしても女優さんが美しい。
妻役の新珠三千代さん、淡島千景さんや有馬稲子さんもですが、今の女優さんにはない、内面からにじみ出るような大人な雰囲気が漂っていて、ハリウッド女優に負けないくらいの品と度胸があって。
やっぱり戦争を体験している世代っていうのは生き抜いてきた強さがあって、それが画面を通して伝わっているのかもしれないですね。
ロケーションが砂山だったりと殺風景ですが、それが逆にキャストの動きや心模様を浮き上がらせているようで効果的。
カメラワークはシンプルですが、たまに斜め構図などを使ってドキっとさせられます。
こういう戦争映画って、内容的・予算的にももう今撮れないんじゃないかと思うくらいなんですが、この時代の映画には哲学的なセリフもたくさん入っていて学ぶものが多いですね。
第3部以降も見てみたいと思います。
↓第一部 純愛篇/第二部 激怒篇 予告編
こちらの仲代達矢さんも素晴らしいです↓
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