カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『近松物語』(1954年 日本)

Daiei Film - CC 表示-継承 4.0, リンクによる

人形浄瑠璃が原作の“禁断の愛”を溝口健二監督が映画化

今朝の1日1映画は『近松物語』(1954年 日本)を鑑賞。

京都の大店の手代、茂平(長谷川一夫)は、店の主人(進藤英太郎)の若妻おさん(香川京子)の頼みで彼女の兄の借金の工面をするが、それが主人にばれて店をクビになってしまう。

さらに茂平とおさんは不義の疑いを掛けられ、2人はいっしょに逃走することに。

2人は逃走の中で真剣に愛し合うようになるが、おさんの夫の追跡が迫り…。

近松門左衛門作の人形浄瑠璃『大経師昔暦』を下敷きに川口松太郎が「おさん茂兵衛」として劇化。

それを、「忠臣蔵(1954)」の依田義賢が脚本を執筆、「噂の女」の溝口健二が監督した作品です。

最初、状況説明と人間関係の整理がちょっと必要。

通して見ると話は単純なんですが、知らない俳優さんがほとんどで、溝口健二監督って、ミドルショット以上にアップにならないので、「俳優さんの顔をはっきりと認識できない問題」というのがありまして、この人はさっきの人? どういう関係? というのがありまして…。

交通整理をしてから望めば問題ないです。

商店の頭(かしら)の若い後妻と若い使用人との恋という内容で、当時は姦通罪で死刑が適用されるので、命がけのお話です。

先日見た、ともに人形浄瑠璃が原作の『曾根崎心中』と似ているんですが、あちらは「死にたい」欲にあふれた狂気迫る内容でしたが、こちらの方が人間らしく、2人で「生きたい」欲がありますね。

先日見た溝口監督『西鶴一代女』のカメラが動き回るショットに比べて、こちらのカメラワークは大人しい印象。

逃げる道中、夜霧の琵琶湖で小舟に乗った2人がゆらゆらと揺れながら本心を打ち明けるシーンは、その心の揺れ具合と小舟の不安定さが相まって、ビュンと劇的に気持ちが動く、美しく心を打つシーンですね。

社会通念や慣習が重く、女性が生き方を選べない時代。

この時代のこういう恋愛には常にその先に死が待っている。

何となく感じるのは、同じく若者の死が待っているベトナム戦争時代のアメリカ映画に似た雰囲気があるんですよね。

「天国で(極楽で)一緒になろう」というバッドエンドというか、裏返せばハッピーエンドというか。

余韻の残る映画です。

↓予告編

 
 

溝口健二監督作品はこちらも良かったです↓

katori-nu100.hatenablog.com

 

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