『宵待草』(1974年 日本)
「映画なんてものはね、所詮遊びさ。悪い夢かもしれないが、だから面白いんだな。ハハハ」(映画より)
神代辰巳×長谷川和彦×細野晴臣の才能が結集
今朝の1日1映画は『宵待草』(1974年 日本)を鑑賞。
時は大正時代。
アナーキストの集団「ダムダム団」に所属する活動弁士の平田玄二(夏八木勲)と大学生の国彦(高岡健二)。
交番襲撃に失敗したダムダム団は、今度は政界の黒幕北条寺の孫娘(高橋洋子)を誘拐したが…。
アナーキストが暗躍した大正時代を舞台に繰り広げる、若者と政治家令嬢の逃避行。
音楽監督は細野晴臣、芥川賞候補作家であり女優の高橋洋子が主演した異色のニューシネマです。
先日見た神代作品『恋人たちは濡れた』の他にも神代作品を少し見てみようと思い鑑賞。
こちらの作品も独特の空気感がありますね。
時代設定は大正時代なんですが、この映画に漂う雰囲気はもろに70年代で、大正時代であることを忘れてしまうかのような感じさえあります。
やはりこの作品の特徴は登場人物が随所で歌う「枯れすすき」などの大正時代の流行歌の数々。
瞬間瞬間を生きているエネルギーあふれる若者の姿がある反面、未来を予測できない閉そく感の中で右往左往する姿と表裏一体となっていて、歌が癒しの役割となっている。
流行歌って、いつの時代も人の心を癒すものとして存在していたのかななんて思います。
カラオケもストレス発散になりますもんね。
映画のモデルはきっとアメリカの『俺たちに明日はない』(1968)のボニー&クライドや『明日に向って撃て!』(1969)で、設定を男2人+女1人の3人にして展開している感じ。
『恋人たちは濡れた』と同じく3人の動きが面白くって、その動きが何とも言えない感情を呼び起こすんですよね。
国彦が女の子を抱こうとするといつも激しい頭痛に襲われるという設定や、馬や自転車を性のメタファー(隠喩)として描いているのも面白い。
大胆な演技を披露している高橋洋子さんはほんとかわいいです。
カメラは手持ちがほとんどで、ロングからの望遠ズームアップやズームアウトを多用し、セリフと口の動きは違う場面も多い。
そういうある意味荒っぽくフラフラした映像が、若者たちを象徴しているかのようです。
細野さんの音楽は好きなんですが、ティン・パン・アレー時代にこういう映画音楽を手掛けていたんですね。
ピアノが多めで、歌以外の部分で映画のムードをポップな感じに持ち上げてる気がします。
当時の才能あふれるアーティストが集まった、夢のような雰囲気の中、撮影された時代を堪能できる作品です。
↓強盗シーン
神代辰巳監督作品はこちらも見ました↓
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