『カリガリ博士』(1919年 ドイツ)
アートの世界に迷い込んだようなセット!
103年前のドイツの革命的作品。
今朝の1日1映画は『カリガリ博士』(1919年 ドイツ)を鑑賞。
北ドイツ、カリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)は眠り男ツェザーレ(コンラート・ファイト)の予言を看板にした見世物をカーニバルに出している。
友人アラン(ハンス・ハインツ・フォン・トワルドウスキー)を連れ、その小屋を覗いたフランシス(フリードリッヒ・フェーエル)。
友人は調子にのって自分がいつまで生きられるかを眠り男に尋ねるが、答えは“明日の朝まで!”。
本当に彼は翌日には殺されており、フランシスは疑惑究明に乗り出すが……。
1919年制作(日本だと大正8年)、1920年に公開されたローベルト・ヴィーネ監督によるドイツ表現主義の映画です。
いやー、アートですね、これ。
無声映画なので、ストーリーがちょっと分かりにくい感じはあるんですが、見た目のインパクトがすごい。
三角形や斜めに曲がった背景、異常な角度で傾いたりねじれたりしている構造物や風景、セットに直接描かれた影や光の筋、絵。
ダリの絵?
アートアニメーションの世界?
遊園地のびっくりハウス(マジックハウス)?
暗くてねじれた視覚スタイル、歪んだ世界に迷い込んだような不思議なセットの中で、メイクや演技を誇張した登場人物がある殺人事件をきっかけに騒動を繰り広げる。
見ていると、何が本当で何が嘘なのが分からなくなってきます。
それがこの映画の言いたいところで、最後にどんでん返しが待っているんですけどね。
「ドイツ表現主義」とは何ぞや?なんですが、ドイツにおいて第一次世界大戦前に始まり1920年代に最盛となった芸術運動で、客観的表現を排して内面の主観的な表現に主眼をおくことを特徴とした芸術様式とのこと。
ストーリーの、精神的に捻じれた世界を視覚的に表現してあります。
照明は、第一次世界大戦後の電力不足で低予算にする必要があり、光をコントロールするため全シーンセットで、光が足りない部分には影を線で描いているという工夫ぶり。
カメラは据え置きが多いですが、アップショットはたまにある。
カメラが動かない分、ワイプのような場面転換(アイリスショット)が印象的で、フレームの中で注目させたい人物をワイプで抜いてイン・アウトさせていて、あー、こういうやり方があるのかと逆に教えられます。
溝口健二監督も影響を受けたようで、1923年に制作した『血と霊』では、歪んだセット、コントラストが強い作風などを踏襲しているそう。
でも興行的に失敗していて、フィルムが失われたため、現在観ることは不可能らしいんですけど、ぜひ見てみたい。
どこかのフィルム庫に眠っていて発見されることを祈ります。。。
古い映画を見ていると、今より斬新なことが行われていたんだなぁとびっくりすることがあるんですが、映画でいろんなチャレンジができていた本当に素敵な時代だったんでしょうね。
キャスト&制作スタッフがワクワクしながらモノづくりを行っていたんだろうなということが伝わる作品です。
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