カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『讃歌』(1972年 日本)

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画像:リンクより

谷崎潤一郎の原作を新藤兼人監督が映画化。
献身的な究極の愛

今朝の1日1映画は『讃歌』(1972年 日本)を鑑賞。

琴三弦の道に励み、15歳には他に比肩するものがないほどの才能をみせた盲目のお琴(渡辺督子)。

そしてお琴の稽古のお供を日課とし、崇拝と奉仕ひとすじ、どんな苦役にも甘んじて仕える佐助18歳(河原崎次郎)。

佐助はお琴に憧れ、ひそかに夜中押入れの暗闇の中で音を立てずに三味線を爪弾くことで同じように盲目の世界に浸るのは無上の喜びであった。

ある晩曲者が侵入する事件が起き…。

巨匠新藤兼人監督が、愛の「献身」と「掠奪」の中に人間のエゴイズム、愛の極限を描く、文豪谷崎潤一郎の不朽の名作「春琴抄」の映画化作品です。

原作は未読なんですが、「春琴抄」を原作にした映画が何作品かありまして、その中からまず新藤兼人監督作品を。

世の中にはいろんな愛がありますが、この映画の愛は「利他の精神」の究極の形を描いた作品ですね。

自分の話をしゃべることより、他人の話を聞くことの方が難しいといわれるように、自分よりも他人を優先するのってなかなか難しかったりします。

主人公春琴のわがままで荒っぽい性格は、普通に考えると手が付けられないんですが、それを女王様に仕えるM男のように親身になって支える佐吉。

その献身ぶりは、見返りを求めているのかどうかを考えさせないくらいの関係性に見えます。

それが真実かどうなのか知りたい男(新藤兼人/ノンクレジットで監督が役者としても出演)と当時を知る女中(乙羽信子)が過去を振り返りながらナレーションとともに描く構成になっていて、アート系映画のATGですが分かりやすいです。

とはいえ、白塗りや幻想的なカットも入れ込んであり、裸体は出てきますが、エロスではなく美しさや崇高さの方が勝っていて、2人の関係が俗っぽい関係ではない域まで押し上げる演出がしてある。

エログロ作品とはまた違った、新藤作品特有の人間の力強さとともに品が保たれていて、見終わった後も厳かな和室で三味線とお琴がチントンシャンと鳴り響いているような余韻が残ります。

この品と人間力の言い表せないような絶妙なバランスって、新藤兼人作品ならではなのかも。

他の「春琴抄」の映画化作品も見比べてみたいです。

PS1:ボンボンで三味線の弟子・利太郎役に、28歳の原田大二郎さんが出演していて、赤ふんどし姿を披露。背も高いしシュっとしていて目を引きます。

 

 
 

 

PS2:先日見た萩原流行さん主演『瞳をとじて』(2013年 日本)は、アンドレ・ジッドの小説「田園交響楽」(1919)を映画化したものですが、この映画の原作「春琴抄」(1933)と話が似ていますね。谷崎潤一郎はジッドの「田園交響楽」に影響を受けていたのかも(憶測ですが)↓

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