『ハンニバル』(2001年 アメリカ)
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まるでオペラのような荘厳さ
禁断のサイコ・ホラー
今朝の1日1映画は『ハンニバル』(2001年 アメリカ)を鑑賞。
アカデミー賞を受賞した傑作サスペンスミステリー「羊たちの沈黙」の続編。
あの惨劇から10年、殺人鬼レクター博士からクラリスに1通の手紙が届く。
そこには“クラリス、いまも羊たちの悲鳴が聞こえるか教えたまえ”と記されていた……。
トマス・ハリスの同名ベストセラーを「ブレードランナー」「グラディエーター」のリドリー・スコット監督が映画化。
レクター博士は前作に続きA・ホプキンスが、そしてFBI特別捜査官クラリスはJ・フォスターに代わりジュリアン・ムーアが演じています。
こういう続編って普通はまず前作の『羊たちの沈黙』(1991年)を見てから見るもんだと思うんですが、前作は観てない(見ていても忘れている)状態で鑑賞。
怖い作品とは聞いてましたが、「キャーッ!」「やめてー!」っていう被害者側の命の危険に対しての恐怖はあまりないですね。
「うわうわうわ…」「あららら…」という加害者による残忍さの顛末を見せ付けられる怖さの方が勝る。
ある意味「変態映画」の部類です。
昔のヨーロッパでは死刑として首吊り・内臓抉り・四つ裂きの刑というのが普通にあったので、見慣れた光景だったのかもしれない。
でも現代人が見ると、脳の普段使わない部分のシナプスがビュンビュン伝達しているような軽い興奮と疲労を伴う感覚があって刺激的です。
個人的に見どころだなと思ったのは美術。
レクター博士のような殺人鬼って、道徳の範疇を超えたその先の世界を追求する欲望の強さがあるんですが、それは殺人だけでなく、その他の分野においても究極的。
その一つが美に対する追求で、落ち着いた色調の部屋にならんだエレガントな調度品、キッチンに並んだプロフェッショナルな調理器具、高級そうなアンティーク家具…。
丸いフォルムのものではなく、どちらかというと四角いフォルムの物が多く、きちんとした雰囲気があってレクター博士の完璧主義のような性格を象徴しています。
また、大富豪メイスン・ヴァージャーの家も豪華で、花瓶に必ず花が刺されていて、黄色や紫などの花の色が画面の構図の中でアクセントになっている。
あとは霧や雨、光と影、蜘蛛の巣までもがこの映画の荘厳な世界観を作り、そこに静かにクラシックの舞踊曲や歌声が響きわたる。
“殺人劇場”というべき、映画全体が至福のひとときを過ごすオペラのような雰囲気があるんですよね。
ただのサスペンス映画やホラー映画ではない、神に近い領域というか。
レクター博士のセリフとして世界文学の最高峰、ダンテの「新曲」(映画では新生)の一節が出てきます。
「楽しい恋とは彼の手に心臓を掴まれること」…など。
こういう象徴的なセリフもレクター博士の内面を象徴していてゾワゾワとさせてくれます。
五感を刺激するアイテムの使い方や派手なアクションも見ごたえあり、心理面からの恐怖感やホラー的なブラックな皮肉も味わえる後味の悪い映画です(←いい意味で)。
PS:イノシシのシーンって、『孤狼の血』のブタ小屋のエグいシーンと似てますよね。白石和彌監督、もしかしたら影響を受けているのかも。
↓予告編
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