『蒲田行進曲』(1982年 日本)
泣く、笑う、(手に汗を)にぎる、まさに劇的!
つかこうへいの舞台を映画化した名作。
今朝の1日1映画は『蒲田行進曲』(1982年 日本)を鑑賞。
時代劇のメッカ、 東映京都撮影所。
人情に篤いが激情家なのが玉にキズの大スター銀ちゃん(風間杜夫)と、その銀ちゃんに憧れる大部屋俳優のヤス(平田満)。
ある日、ヤスのアパートに銀ちゃんが女優の小夏(松坂慶子)を連れてやって来た。
銀ちゃんの子を身ごもった小夏をスキャンダルになるからとヤスに押し付けに来たのだった……。
映画撮影所を舞台に、スターと大部屋俳優の男、そして落ち目の女優の奇妙な人間関係を軸に、撮影所の舞台裏を織り交ぜて描く、つかこうへいの舞台を深作欣二が監督したちょっと辛口の大ヒット人情喜劇です。
こんなに名作なんですが、初鑑賞です。
つかこうへい原作のお芝居は過去に『熱海殺人事件』などを見たことあるんですが、まくしたてるような早口でどんどん進むイメージで、個人的にはその世界観に酔いしれる感じではなかった記憶が。
でもこの作品は、すごいですね。
ラストではウルっときてしまいまして。
まず、すごいなと思ったのは、熱量。
もともと舞台作品だけに、現実離れした感じではあるんですが、特に風間杜夫演じる、舞台からそのまま抜け出てきた破天荒なキャラクターがぶっ飛んでいて。
この作品から風間杜夫さんは人気が出てTVドラマ『スチュワーデス物語』でさらに大ブレイク。
当時33歳で、シュっとしていてかっこいいです。
次に、心を打つ主人公ヤス(平田満)の健気さ。
大部屋の売れない俳優が、俳優仲間に難題を押し付けられるんですが、それを慎ましやかに受け入れて、怪我をしながら頑張る姿が愛おしくて。
人間って、なんやかんや言っても自分が一番大事だったりします。
でもこの主人公は、愛する人はもちろん他人や他人の子供に対しても優しい。
そのためには命の危険をも顧みない。
こんな命がけで他人のために頑張る主人公に心を打たれない人っているでしょうか。
彼にも葛藤があるんですが、それに打ち勝っての行動。
まさに「利他の心」です。
脚本的には、映画の撮影所という、体力は使うけどよっぽどでない限り命の危険まではない場所を、高所という「死の危険」のある場所に設定して、スリルを生み出している点。
「落ちたら死ぬよ」という場所でアクションを展開してあり、原始的に誰もが共感できるんですよね。
さらに、そこに彼らの人生や立場をもメタファー(隠喩)として入れ込んである。
この映画も立場や貧富を高低差で表現した、「高低差映画」(『パラサイト 半地下の家族』『タイタニック』など)の部類だということに気づかされます。
松坂慶子さんは、脱いでらっしゃって大胆な演技も素晴らしいんですが、2人の男性に対して心が揺らぐ内心を本当にうまく表現していて。
「あんたーーーーっ」って叫ぶセリフが耳にこびりついて離れません。
技法はズームが多用され、動きのある場面が多く、ザ・活劇。
ちょっと違いますが、先日私も地元劇団の舞台公演の撮影&編集をしたんですが、舞台をいかに映像で見せるかというのに苦労して。
深作監督の舞台を映画化する際の魅せ方についても勉強になります。
人を楽しませるような技がたくさん詰まった作品です。
いつもご覧いただきありがとうございます♪
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