『安寿と厨子王丸』(1961年 日本)
画像:リンクより
封建時代の女性の絶望感…。
森鴎外版を原作に豪華俳優陣が声を務めるアニメーション
今朝の1日1映画は『安寿と厨子王丸』(1961年 日本)を鑑賞。
平安時代の日本。
陸奥国の役人である岩木判官正氏は陰謀のために失脚し、その家族も流浪の身となる。
判官の妻の八汐と子供の安寿、厨子王丸は旅の途中で、騙されて奴隷として売られてしまう。
由良の長者・山椒大夫の元に送られた安寿と厨子王は過酷な労働に耐え、いつか母と再会できることを望んでいたが、さらにむごい仕打ちが待ち構えていた…。
森鴎外の小説「山椒大夫」を原作に、創立10周年を記念した東映が、綿密なロケハンや作画参考用のライブフィルムの撮影など、製作期間2年を費やして長編アニメ化した、『ひょっこりひょうたん島』を手掛けた薮下泰司監督による作品です。
子供の頃、本で読んだ記憶はありましたが、どんな話だったのかはすっかり忘れているのでアニメーション作品で再鑑賞。
なるほどー、基本は「悪い奴から逃げろ!」なので分かりやすい。
主人公がいろんな苦難に遭遇しながら悪を倒して成長する物語です。
見ながら、やっぱり「女性」がね、かなり絶望的。
封建社会において、結婚相手も自由に決められず、悪い奴から言い寄られ、行き場を失った女性たちは、逃げ出してもいいことにはならない。
そりゃネガティブ・シンキングになりますわなぁ。
厨子王の成長物語ではありますが、女性の立場から見ると、現世では無理だけどあの世で願いをかなえるという、昔の日本独特の儚く切ない物語です。
この女性の絶望感は見たことあるぞと思い起こすと、溝口健二監督が描く女性像と合致。
調べて見ると、溝口健二監督はこの話のベースとなった『山椒大夫』を映画化しているのですね。
溝口健二監督が映画化したくなる気持ち、分かる分かる!
それと、愛する者を失った者が「出家する」という行動。
これもアジア的だなあと思って。
以前見た台湾映画『侠女』(1971年 台湾・香港合作)でもそんなシーンがあり、この発想って、東洋の仏教とかからくる考え方なんでしょうかね。
アニメーションは人物モデルに演技を行わせ、その実写フィルムを下敷きに、アニメーション作画を行う「ライブ・アクション方式」を一部採用。
確かに動きがスムーズでリアルな感じがします。
声優は当時の豪華俳優陣が集められ、安寿は佐久間良子さん、厨子王丸の少年時代は住田知仁(現・風間杜夫)さん、厨子王丸の青年時代は北大路欣也さん、母・八汐は山田五十鈴さん、山椒太夫は東野英治郎さん、長男・次郎を平幹二朗さん、と豪華。
特に安寿は観ながら佐久間さんの優しい笑顔が浮かんでくるよう。
キャラクターたちは、当時流行っていた時代劇のメイクをしていて、まつ毛が長くバサバサしています。
犬、くま、ネズミなどお供の動物たちは丸いフォルムでレトロで可愛らしい。
歌も所々に入りミュージカル風になっていて、激しい場面はあまりないので、子供にやさしい作りになっています。
今のアニメ―ションっていかにリアルに再現するかみたいなのが多かったりする印象ですが、この作品は水の表現はリアルでしたが、日本の伝統色のような色味を使った大和絵の風情があり、アート作品を見ている気持ちに。
昔のアニメーショも素敵ですね。
↓予告編
↓この作品も薮下泰司監督が監修。どおりで動物たちがかわいいはず!
↓独特の東洋的世界観がなかなか面白いですよ。
いつもご覧いただきありがとうございます♪
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