『タイムコード』(2000年 アメリカ)
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4つの別の物語が同時に語られる
画期的な作りの即興ドラマ。
今朝の1日1映画は『タイムコード』(2000年 アメリカ)を鑑賞。
映画製作会社のオフィスとその周辺で繰り広げられる出来事を、4台のカメラによって同時に撮影。
4つの連続した93分のテイクから構成される非常に実験的な映画です。
中心的なお話は離婚検討中の男性アレックの話と、なんとか映画に出演したい女優ローズの話。
画面は4分割され、各カメラが映し出している別々の映像が進むので、見始めてしばらくは情報量が多くて混乱します。
しかもカメラは固定ではなく、場所を動き、シーン3に映っていた場所がシーン2に移動したり、人もシーン1にいた人がシーン4に移動など、目まぐるしく場所も人も入れ替わるし。
ですが、しばらく見ていると、主要な人物が分かってくる。
脳が「この人はこうなのかな」と足りないストーリーをつなげていくんですよね。
フレームからいなくなってもその人は存在し、いなくなった場所のその後のストーリーも語られるという、映画のフレームの外にも世界があるということを実感できる作りになっています。
別々の時間に撮影された4つの映像かなと思ったんですが、これらはすべてリアルタイム。
それを鑑賞者に分からせる方法として、いわゆる天候的な「自然現象」があるんですよね。
4画面が同じタイミングで同じことが起きる。
これはうまいと思いました。
撮影方法を見ると、非常に面白い。
まず15日間毎日通しのリハーサルを行います。
午前に撮影、午後に俳優たちは4台の別々のモニターで各カメラの視点を同時に再生する映像を見ながら議論するという、キャストとスタッフが一丸となって作り上げる濃い作り方。
本番は4台のハンディーデジタルカメラで1回の撮影(一発撮り)で撮影されていて、まるで演劇の本番のよう。
演技の大部分は即興で、キャストのヘアメイク、衣装はキャスト本人が担当。
マイク・フィギス監督は、俳優に空白の4譜の「音楽原稿用紙」を提供しました。
各オクターブに分を表示、タイミングで芝居の内容を伝えるという画期的な方法。
監督が細かく指示するのではなく、俳優自身が、4画面の自分のパフォーマンスを考えて演じていくという俳優にとっても新しい挑戦だったんだろうと思います。
映画って、独りよがりの作品よりも、多くの人がアイデアを出した作品ほど、観客の共感ポイントが増え、より面白くなると思うんですが、スタッフだけでなく、キャストのアイデアをフルに活かしたこの方法は、そういう面がかなりフォローされていて、即興だけど即興に見えない完成度がある。
現代美術でこういう作品を見たことがありましたが、ストーリーのある映画として成立するんだということを改めて思いました。
画面も作り方も新しい出会いがある映画ですね。
↓予告編