『劇場版 フランダースの犬』(1997年 日本)
この悲劇、日本的。
今朝の1日1映画は『劇場版 フランダースの犬』(1997年 日本)を鑑賞。
19世紀のベルギー、フランダース地方。
アントワープにある大聖堂を、一人の修道女が訪れる。
彼女は、聖堂に飾られている大画家ルーベンスの「聖母被昇天」を仰ぎ見るうち、その記憶は20年前へとさかのぼる。
おじいさんと牛乳運びで生計を立てる少年ネロと愛犬パトラッシュは、貧しいながらも幸せに暮らしていた。
ネロの夢はルーベンスのような画家になること。そんなネロのささやかだが幸せな日々は長くは続かなかった…。
75年にフジテレビ『世界名作劇場』で放送され多くの視聴者に感動を与えた、少年ネロと愛犬パトラッシュの友情を描いた物語を、構想も新たに劇場版としてリメイクした長編アニメーションです。
ラストシーンのみがいろんな番組で取り上げられる機会が多いですが、全体的なお話はどうだったのかなと思い劇場版を鑑賞。
うん、やはりあの有名なラストシーンで朝から泣けます。
改めて見ると、これでもか!というほどの悲劇の連続…。
普通は映画の構成として、どんなにつらい状況の主人公にも楽しいひと時というのが20分ぐらいあるものですが、この映画にはほんの僅かしかなく、悲劇が5分置きぐらい頻繁に主人公に降りかかる。
悲劇も後半になるにつれだんだん大事(おおごと)になっていくので、いわれなき罪などその理不尽さに見ている方もフラストレーションがたまっていきます。
主人公は貧しくとも心優しき非力な少年。
悪い奴らが改心し、ネロをを救おうと思った時には、時すでに遅しという。
主人公が大人だったり精神的に強い子だったら敵を倒したり自力で跳ね返していくんだと思うんですが、ネロはそういうタイプの子ではないので、あのラストシーンは、一見バッドエンドのようですが、やっと苦難から解放されるというハッピーエンドなんだなぁと思わされる。
あの時、近所のおばちゃんに助けてもらえたらこんなことには…という、社会には手を差し伸べるべき人がいるということを改めて思い知らされます。
日本では絶大な人気のこの作品ですが、イギリス文学である原作の知名度はそれほど高くないうえ、内容も評価されていなかったそうで。
考えてみると、こういう身分や貧富の差を描いた悲劇って日本の物語には多い気がするんですよね。
ちょっとパターンは違いますが、江戸時代の許されざる恋を描いた『曽根崎心中』『近松物語』などの「心中もの」などもそういう部類ではないかと。
この映画も、愛犬パトラッシュを、ネロの幼馴染みで身分の高いお嬢様アロアに置き換えると、身分差により会う事を禁じられた男の子と女の子が、追い詰められたあげく天国ともいえる憧れの場所(教会内のルーベンスの絵の前)で天国に行くという。
心中ものと似た観点の作品としてとらえるとしっくりくるし、なぜ日本で愛されたのかが分かる気がします。
大人になって見ると、特殊能力を身に着けたスーパーヒーローの正反対ともいえる、社会や時代に立ち向かえなかった少年の悲劇に、改めてグッとくるものを感じますね。
PS:絵描きのアイク役の声を元フジテレビアナウンサーの露木茂さんがやっているんですが、しゃべり方がアナウンサーのしゃべり方でちょっと面白いです。
↓これぞ日本の悲劇。
いつもご覧いただきありがとうございます♪
にほんブログ村参加中