『薄桜記』(1959年 日本)
市川雷蔵×勝新太郎
「静」と「動」が織りなす美しい映画
今朝の1日1映画は『薄桜記』(1959年 日本)を鑑賞。
浪人の中山安兵衛(勝新太郎)は叔父の助勢に高田馬場へ駆けつける途中、旗本の丹下典膳(市川雷蔵)と知り合い、彼の助言によって決闘の相手を打ち倒す。
しかし典膳は同門の知心流の加勢をしなかったことを非難されて道場を破門。
安兵衛もまた堀内流を破門される。
運命のいたずらか、ともに上杉家江戸家老の名代の妹・千春(真城千都世)へ想いを寄せる二人。
偶然に翻弄され、流転の運命を辿るが…。
高田馬場の決闘から吉良邸討ち入りまでの赤穂浪士の物語を背景に、脚本・伊藤大輔、監督・森一生が市川雷蔵・勝新太郎を主演に贈る日本映画史に輝く傑作時代劇です。
私は「赤穂浪士」とか「新選組」とかそこまで人間関係が分かっていないのですが、そんな人でもこの映画はグッとくる要素で固められていますね。
まず画作りと悲劇の心模様の描写が美しい。
天候を心模様のメタファー(隠喩)として使ってあり、音なく降り積もる細雪、ポツ、ポツと振り出しから土砂降りに変化する雨、まるで『風と共に去りぬ』のように印象に残る夕日…。
安兵衛(勝)、典膳(市川)のライバル2人が言葉を交わすシーンは少ないのですが、お互いがどう思っているのかをこれらの背景や照明、ナレーションで表現していて、直接的ではなく間接話法的な見せ方が日本人ならではのお互いの胸の内を探る感じがあってグッとくるんですよねぇ。
また「お犬様」(生類憐れみの令発令中)や「夫婦雛」などの小道具の使い方も面白く、「橋」や「川」も転機となるシーンで効果的に使用。
演技としては2人の立ち回りと表情。
典膳(市川)はあまりその場を動かず斬るという戦法で、典膳(市川)の凛とした雰囲気、抑制した感情表現にぴったりの殺陣。
特にラストの千春(真城)との雪の中のシーンは美しすぎて死にそう。
逆に安兵衛(勝)は、身振りが大きく、力強く全身で感情表現をする。
悲しい時はむせび泣き、悔しい時は相手をにらみつけて叩き斬る。
この2人の「静」と「動」の対比が美しく、2大スターのいい所を堪能できる1度で2度美味しい映画になっています。
また、表情は、典膳(市川)の方は切なく遠くを見る“雨の日の子犬”、安兵衛(勝)はキラキラ目を輝かせる“生まれたてのバンビ”みたいな表情を一瞬するシーンがあって、あー、これがこの2人の映画俳優としての(アップシーンが印象的な)魅力なんだなと再確認です。
テーマはまさしく「バディとの友情」で、一見主人公は典膳(市川)に見えるんですが、映画を通して大きな心の変化が起きるのは安兵衛(勝)の方で、ラストシーンは新たな一歩を踏み出す安兵衛(勝)を応援せずにはいられない展開。
時代劇って、殺陣だけではなく、その裏にある心模様や心の変化を巧みに入れ込むと、こんなに面白くていい映画になるんだと勉強になりました。
ほんと美しい映画です。
↓予告編
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