カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『ある殺し屋』(1967年 日本)

ギャップに驚くクールでスタイリッシュな和製ノワール

今朝の1日1映画は『ある殺し屋』(1967年 日本)を鑑賞。

小料理屋の主人・塩沢は高額な金で殺人を請け負う殺しのプロという裏の顔を持っていた。

暴力団の幹部・木村の依頼で、敵対する組織のボス・大和田を見事に仕留めた塩沢に、木村は弟分にしてくれと近づく。

やがて塩沢の押しかけ女房気取りの圭子と木村は色と欲で結びつき、ある計画を塩沢に持ちかける……。

増村保造(『曽根崎心中』)脚本、森一生(『続・座頭市物語』)監督、宮川一夫(『影武者』)撮影、市川雷蔵を主演に描く和製フィルムノワールです。

市川雷蔵主演映画を立て続けに見ていますが、これはまたすんごい!

他作品とのギャップが!

「人間の一番の魅力はギャップ」と言われるくらい、ギャップは心を動かされる要素。

電車に乗る姿がどう見てもまじめなサラリーマンにしか見えないんですが、これまで見てきた市川雷蔵主演映画の侍、忍者、学生とまたまったく違う風貌で、同一人物には見えないんですよね。

キムタクはどんな役を演じてもキムタクなんですが、1人でどんな役にもなりきれるカメレオン俳優ってものすごい貴重だし、重宝されますよねぇ(その分働きづくめになりますが…)。

また別の顔としての殺し屋がめちゃくちゃクール。

そのどう見ても七三分け真面目そうな品の良い身なりの人が、みんながワイワイしている中でサクっと任務を遂行する。

今、人が倒れたけど、なんで? と思ったら、“タタミ針”で急所を刺されて殺されているみたいな展開で。

任務遂行としては忍者も似たような雰囲気がありますが、『ゴッドファーザー』の「幸せ絶頂直後のどん底」法則で、歓喜からの悲劇というメリハリの付け方もオーっとうなり、クールさがより際立つんですよね。

見進めていくうち、この七三分け、ただ者じゃない、近づくな! のオーラが増してくる。

おもろくないわけないです。

その緊張感のある主役塩沢に、チャラい女・圭子(野川由美子)と、塩沢の弟分になりたい前田(成田三樹夫)というやっかいな2人が絡んできてそのストーリーが転がり乱されていきます。

でも映画の雰囲気は雑にならずに、不思議と凛とした雰囲気を保っているのは、感情を抑えた塩沢の演技に加えて、宮川一夫の撮影による無彩色に近い色味の背景のせいかもしれません。(カラフルな色はヘアメイク・衣装で圭子に特化)

また過去や未来(中過去)の回想が前後して挿入されるんですが、前後のカットに関連したカット(手→手、料理→料理のように)でつないであることで違和感なくスッと見進めることができるせいもあるのかも。

殺陣などの見せ場ももちろんあるんですが、映画を見始めた時の印象と、ラストの印象がここまで違うかというくらい、背中で語る1人の男の生き様を見せつけられた感があります。

音楽も哀愁があるし、衣装も途中、塩沢が着物姿になるシーンがあるんですが、歌舞伎役者だけにさすがに品があって様になっていて、殺し屋とのギャップをさらに作り出していて効果的。

戦争で生き延びた人々の思いもちゃんと織り込んであって、人間関係にも深みもある。
フランスやイタリア映画の影響も見れるようですが、日本映画でもこんなにクールな映画があるんですねぇ。

続編もあるので、いつか見てみたいと思います。

PS:個人的には手のシーンが好きなのと、小林幸子が出てるのに、顔を見ても分からなかったです…。

↓予告編

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