『陸軍中野学校』(1967年 日本)
これは面白い!
実在した日本のスパイ学校で遂行される静かな狂気
今朝の1日1映画は『陸軍中野学校』(1967年 日本)を鑑賞。
世界情勢が緊迫の度を増す昭和13年、士官学校を卒業し陸軍へ少尉入隊が決まった三好次郎は、自分と同じ幹部候補生らとある場所に集められる。
そこは中野学校という、日本で初めての諜報員養成所であった・・・。
市川雷蔵が国際スパイに扮して、激動の昭和史を暗躍する「陸軍中野学校」シリーズ第1作です。
「陸軍中野学校」というと、4年前に公開された、第二次世界大戦の時に身分を隠して沖縄の各地に潜伏していた「陸軍中野学校」出身者42人を追ったドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』を見ていたので、その存在は知っていました。
けど、陸軍中野学校はタブーとして語り継がれていてそんな表立った存在ではなかったと思っていたんですが、あれまあ、今から56年前にはこんな大スター・市川雷蔵&大監督・増村保造がエンターテインメント作品として題材にしていたなんて…個人的に驚きです。
しかも、そのドキュメンタリー映画のイメージがあるもんだから、覚悟してみたんですが、めちゃくちゃ面白い!
なんでしょう、この推進力は!
「うわーやめてー」「ヤバイヤバイ」など、声に出して感情移入してしまいました。
テーマとしては組織の目標を叶えるために集団が行動することによって、個人の幸せが奪われ、人間を狂わせるという、なんとも悲痛で皮肉な内容。
全編を、学校に入ってきた帝大出のエリート兵・三好次郎目線のナレーションによって語られます。
そのナレーションも淡々と語ることにより、その狂気が一段と際立つ。
主人公・三好次郎が見ているもの、体験することを我々鑑賞者が一緒に体験しているような共感力を生み出しているシナリオです。
スパイ教育の授業も面白くて、ありとあらゆる秘密工作の中に「女性の扱い方」というもあって、黒板には「性感帯」と書いてあり、まじめに授業を受けている様子には笑ったんですが、女性は伏線のように出てきて、スパイにとっては学ばなければいけない存在なんですね。
お話は主軸と副軸の人間関係の転がし方、ねじらせ方が上手くって、ハッとするシーンを手爆弾のようにぶち込んでくることもあれば、じわじわとゆっくり締め上げるように葛藤を入れ込んであるシーンも。
ほんと終始ハラハラドキドキです。
市川雷蔵のスパイとしての変幻ぶり、小川真由美とのラブシーンも美しいんですが、教官役の加東大介の、国のためではなく自分の夢のために奮闘する姿がいいですねぇ。
技法としては「三分割法」が顕著。
対象人物を中心に据えず、左右や上下に配置することにより、構図に美しさが生まれ、緊張感もあります。
軍隊という組織が人をどうしてしまうかを知ることができる反戦映画。
続編もあるので、ぜひ見てみたいです。
↓予告編
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