『幕末太陽傳 デジタル修復版』(1957年 日本)
画像:リンクより
全てを持っていってしまう裕次郎の存在感。
美術も演技も見ごたえ抜群!
今朝の1日1映画は『幕末太陽傳 デジタル修復版』(1957年 日本)を鑑賞。
明治維新まであと5年という幕末の日々。
品川の遊郭で大判振るまいの佐平次(フランキー堺)は実は一文なしで、居残りとなって腰を落ち着けることに。
もう一組の居残り組は高杉晋作(石原裕次郎)をはじめとする勤王の志士たち。
佐平次は彼らと仲良くなり、やがては廓(くるわ)の人気者になっていくが…。
落語の『居残り佐平次』をベースにした、川島雄三監督の代表作ともいえる傑作時代劇コメディーです。
遊郭に出入りする客と遊女たちが各部屋で繰り広げるエピソードで繰り広げられるグランドホテル形式と呼ばれるスタイルの映画。
遊郭にやってきたほら吹き&お調子者が、周りの人たちをどんどん巻き込んでいく様子がものすごくスピーディーに展開します。
キャストのみなさんはめちゃくちゃ早口で、ドタバタしているのでちょっと聞き取りづらい箇所はあるんですが、終始コントの応酬を見ているよう。
人間、いかにバカになれるか。
江戸っ子言葉の佐平次(フランキー堺)の、男も女もひっくるめて口八丁手八丁で人をコロコロ転がす“人たらし”ぶりが面白く、金の工面を反感を買わない形でやりのけ、人々から頼りにされるまでになるその姿に、バカを演じるという賢さで、世渡りをする術を心得てるなあと感心してしまいます。
そんなフランキー堺の喜劇人ぶりも堪能できるんですが、その横にものすごいオーラを放つ人が登場。
石原裕次郎でございます。
日本を守るため外国人への攻撃を企む武士 高杉晋作役なんですが、もう出てきた瞬間からスターのオーラが半端ない!
高杉晋作役として着物を着て刀を持ってはいるんですが、どんなに役柄を盛っても「石原裕次郎」としてのキラキラとした「当時の今風」の存在感があふれ出しているんですよね。
「キムタクは何を演じてもキムタクである」論がありますが、多分裕次郎もその部類なのかと。
スターにもいろいろいますが、どんな役にも変幻自在になりきってしまうスター・市川雷蔵の対極にあるスターの1つのカタチなのかなあと思ったりします。
演出面では、ものすごい細かい美術セットにうわーと声をあげてしまう。
商売繁盛の神棚に飾られているお札、遊女のご指名&人気ランキング表、各部屋の隅々まで置かれている小道具…。
出てくるセットや小道具の一つ一つが積み重なって江戸の人々の生活感や空気感を作り出していて、これまで見た時代劇の中では群を抜いていますね。
美術監督を調べてみると『二十四の瞳』『にっぽん昆虫記』などでも担当した中村公彦。
1952年から70年の間に113本の映画作品の美術に創意を凝らした監督として知られています。
出てくるセットや小道具もなんですが、生き物の存在も印象的で、遠吠えする犬、猫(生きてるのと死んでるのも)、裏部屋のネズミ、蜘蛛の巣、通りを横切る鶏などの存在もものすごーくエッセンスになっていて、江戸の町では動物たちも人間たちと共生していた時代なんだなーと、町の活気を感じ取れます。
そういうこだわりって、映画にとって非常に大事ですよね。
遊女たち(左幸子、南田洋子など)が、おくれ毛や曲線的な身の動きとともに吐く、男たちを虜にする“嘘”の数々も滑稽。
面白いのに、サラっとは見過ごせない要素がふんだんに詰まった名作ですね。
↓予告編
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