『眠狂四郎無頼控 魔性の肌』(1967年 日本)
「神が人を作ったのではない。神こそ人によって作られたのだ!」(映画より)
日本×オランダバテレンの混血剣士の苦悩と活躍
今朝の1日1映画は『眠狂四郎無頼控 魔性の肌』(1967年 日本)を鑑賞。
ある夜、狂四郎(市川雷蔵)は、武家屋敷の前で美しい娘(鰐淵晴子)に呼びとめられ、父の頼みを聞いてほしいと懇願される。
娘の父、闕所物奉行の朝比奈修理亮(金子信雄)は、切支丹の秘宝を京へ運ぶ命を受けたが、隠れ切支丹の黒指党が、秘宝を狙っているので狂四郎に護衛してほしいというのだ。
その場は断った狂四郎だったが、後日、依頼を引き受ける。
報酬は娘・ちさの操という条件で…。
柴田錬三郎の剣豪小説シリーズを映画化し、市川雷蔵の代表作となった眠狂四郎の活躍を描くシリーズ9作品目です。
眠狂四郎については田村正和がなんかやってたなぐらいで、まったく知らなかったんですが、この作品でどんな人物かやっと知りました。
『大菩薩峠』のダークヒーロー、女と酒と人斬りっていうニヒリストな部分は机竜之助に似てるんですが、机竜之助には描かれていない、「なぜ虚無な人になったのか」という背景としての生い立ちが描かれているので(母がバテレンに犯されて生まれた子)、そこは納得感があります。
そのキャラクターに、守るものとやっつける者に区別があり、返すセリフに人生観などの知的さが加わっていて、人としてはダメな部分もあるんだけど、それらが駄目さを上回る。
共感できるキャラクターになっているんですよね。
眠狂四郎自身は己に混沌とした思いを持ち、自分探しの旅をするんですが、行動としては勧善懲悪の分かりやすさがあり、そのバランスというのが絶妙。
RPGゲームのように姫を守りながら弱い敵を倒し、ラスボスまでをやっつける爽快感。
敵の種類、武器アイテムや剣術にも種類があり、「円月殺法」などの殺陣シーンは見ごたえあります。
遠近法が際立つ配置、エロスを美しく入れ込むカットつなぎ、スター役者の一瞬の表情の変化を逃さないアップショットなど魅せる画となっています(ちょっとグロさもありますが…)。
音楽がねー、これまたジャズテイストで迫力あるホーンセクションや軽快なフルート、哀愁あるギターなど、非常に印象的なんですが、のちに「巨人の星」「機動戦士ガンダム」などの音楽を手掛けた渡辺岳夫によるものです。
美術も風になびく色とりどりの無数の帯が美しい。
ダークヒーローだけど共感できる、眠狂四郎。
これぞ日本のエンターテインメントですね。
↓予告編