『ジャズ大名』(1986年 日本)
古谷一行主演で描く一大ジャムセッション!
今朝の1日1映画は『ジャズ大名』(1986年 日本)を鑑賞。
故郷アフリカへ帰るはずが、メキシコ商人に騙されて香港行きの船に乗せられた黒人4人組。
ある日、病気で死んだ一人を残し、大嵐の中ボートで脱出を図った3人は駿河湾の庵原藩に助けられる。
音楽好きの藩主は彼らの演奏するジャズの虜となり……。
筒井康隆の同名短編を『近頃なぜかチャールストン』の岡本喜八監督が映画化。
江戸時代末期、アメリカから駿河の国の小藩に流れ着いた黒人3人が、音楽好きの大名と出会い、城中でジャムセッションを繰り広げる姿を描く奇想天外なコメディーです。
古谷一行さん追悼記念として、主演作品の中からタイトルから気になっていたこの作品を。
見始めてしばらくはシュールなコントを見ている様相。
黒人のしゃべりには英語が聞こえるようにつけている訛りの強い日本語のアフレコ、無声映画のような字幕。
古谷一行演じる藩主や財津一郎演じる家老のバックには能の音楽が流れ、部屋をどんどんリピート映像のように襖を開けながら進んで行く。
廊下をスケートボードに乗った少女が走っていると思ったら、そろばんをスケボーのように使っている…。
一応ストーリーはあるんですが、この先どうなるの?っていう展開ではなくて、人々の群衆がワーってやってきて消えていくっていう感じ。
カメラワークや構図もちょっと凝っていて、ついつい見入ってしまいます。
それがだんだんラストに向かって一大ジャムセッションにつながっていく様子は圧巻で、ありとあらゆるものを楽器にして侍も女中も黒人も分別なくものすごい人数の人々が下層階でどんちゃんやってる。
もうトランス状態です。
上層階ではドンパチやっていて、その時歴史が動いているんですけどね。
この層を上下に分けた展開は、まさに『パラサイト 半地下の家族』や『タイタニック』の世界観で、社会構造そのものを描いているともいえる。
幕末の様相を俯瞰の視点で描きつつ、音楽によって差別や身分差を超えることができるということを表現している気がします。
映画の最初に「松竹映画」の文字と富士山が出て、次に「大映株式会社制作」の文字と夕日が出て、え?って思ったんですが、調べてみると製作会社が大映で、配給が松竹で、撮影は東宝スタジオ+東宝スタッフという、各社によるジャムセッションのような製作になっていて驚きです。
ちょうど脂の乗っている世代でカッコいいです。
利重剛監督やタモリ、山下洋輔、細野晴臣も出ているんですが(細野さんはどこに出ているか分からなかった…)、いちばん面白かったのは医師・玄斉役の殿山泰司。
一言一言がクスっと笑え、この映画のいいアクセントになっています。
画面に映るあふれんばかりの人々の密着度がすごくて、今のコロナのご時世ではこんな映画は撮れないだろうなとつい思ってしまうんですが、独特な間(ま)の取り方や画面から伝わってくる熱量は半端なくて、ある意味うらやましい。
見ていて元気をもらえる映画です。
↓予告編
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