『こちらあみ子』(2022年 日本)
子どもの目線から大人たちが浮かび上がる。
ポップなのに、心に染みます。
今日の1日1映画は、昨晩完成披露上映会で『こちらあみ子』(2022年 日本)を見てきましたのでその感想を。
広島で暮らす小学5年生のあみ子(大沢一菜)。
少し風変わりな彼女は、家族を優しく見守る父(井浦 新)と、書道教室の先生でお腹に赤ちゃんがいる母(尾野真千子)、一緒に登下校してくれる兄、憧れの存在である同級生の男の子のり君ら、多くの人たちに囲まれて元気に過ごしていた。
そんな彼女のあまりにも純粋で素直な行動は、周囲の人たちを否応なく変えていき…。
芥川賞作家・今村夏子が2010年に発表したデビュー小説を映画化。
大森立嗣監督作などで助監督を務めてきた森井勇佑さんの長編監督デビューとなる作品です。
原作は未読なんですが、広島ロケということでちょこっと協力させていただいたこともあり、楽しみに見ました。
(この先は、ストーリーのネタバレにならないように書いていますが、その他の部分で知りたくないことが書いてあるかもしれないので、映画を見る予定の方はご注意ください)
わー! なるほど。
印象としてはポップ。
海や山などの広島の風景が広がって、主人公もみんな広島弁なんだけど、“ド広島”の雰囲気がない。
(“ド広島”の感じは、察してください 笑)
この雰囲気を醸し出しているのは、自由奔放で気持ちに正直な主人公「あみ子」(大沢一菜)の佇まいもあるんですが、彼女に寄り添うように流れている青葉市子さんの「音楽」によるところが大きいかも。
ノイズ交じりのキラキラした世界観を表現した繊細かつ不思議な音楽で、あみ子の耳にはいつもこんな音が流れているんですよーと言わんばかりの透明感のある音の数々。
子どもの時にやった、ジャバラのホースを振り回すと「フォー」という和音のような音がでる遊びがありましたが、きっとあの音も入っていると思うんですよね。
そういった遊び心のある「音」がこの映画のキーになっています。
そして、徹底的に子ども目線で描いてある。
子ども同士や子どもと大人はしゃべるんですが、子どもがいない所で大人同士が会話するシーンがない。(見過ごしてたらごめんなさい)
子どもの目線を通して大人の世界が浮かび上がってくるような描き方がしてあり、独特で面白いです。
大人には言えない子どもの出来事。
子どもには言えない大人の変化。
登場人物たちが時に傷つけたり、時に手探りでお互いを察したりしながら生きている姿を、彼らの内心を想像しながら、自分に照らし合わせながら見ることができます。
見た人の心に必ず何かが残る作品。
ふわっとした夢のようなシーンも登場し、あ、ここにまた新たな《広島風ファンタジー》作品が誕生したな、とニヤリとしながらうれしくなったのでした。
監督やキャストの思いなどは、これから各メディアで紹介されると思いますのでそちらをぜひ。
映画『こちらあみ子』は今週7月8日(金)から全国の劇場で公開です(地域によっては順次公開)。
公式サイト↓
PS1:さまざまな生き物の様子も見逃せないネイチャー系作品でもあります。動物、昆虫など生き物好きな人にもたまらないかも。
PS2:尾野真千子さんの感情のふり幅の最大値が見れます。さすがの役者魂。
写真は舞台挨拶を行った、大沢一菜さん(あみ子役 真ん中)、奥村天晴さん(あみ子のお兄ちゃん役 右から2人目)、大関悠士さん(のり君役 左から2人目)、橘高亨牧さん(坊主頭役 左端)、森井勇祐監督(右端)。
子どもたちは遊びながら撮影していて、楽しい現場だったそうです。
原作を読んでみたくなりました↓
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