カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『破戒』(1962年 日本)

被差別部落が生んだ日本の悲劇を描いた島崎藤村の同名小説を、名匠・市川崑が映画化。
2022版の公開を前に。

今朝の1日1映画は『破戒』(1962年 日本)を鑑賞。

被差別部落出身の小学校教師の瀬川丑松(市川雷蔵)は、亡き父の命に従い、身分を隠して生きていた。

丑松が部落民なのではないかと噂が立ったとき、同僚の土屋(長門裕之)は丑松をかばってくれた。

同じ部落民である部落民開放運動家・猪子蓮太郎(三國連太郎)の突然の訪問に戸惑う丑松は、思わず自分は部落出身者ではないと言って猪子を追い返してしまうが…。

島崎藤村の傑作「破戒」を、名匠・市川崑が映像化。

部落民出身であることを隠し生きる青年教師の苦悩を市川雷蔵が熱演する文芸大作です。

7/8(金)に60年ぶりに『破戒』が映画化&公開されるということで、それも見たいと思っているんですが、以前映画化されている2作も見てからにしようと思い、市川崑監督版を鑑賞。

原作は昔から家にあるんですが、未読です。。

まず印象としては画が美しい。

カラー映画の時代にわざとモノクロで撮っていると思うんですが、ロケ地は雪が数メートル積もるような豪雪地帯で、雪の「白」と建物や衣服の「黒」のコントラストが対比するような画作りがなされている。

ほわっとした光を放つ、まるで銀塩写真を見ているかのような美しさです。

この白と黒は、隠喩的に善と悪を象徴しているかのよう。

奥行きを出し、三分割法を用いて人物を配置した絵画のような構図に、美しい景色のロングショットと美しい俳優たちが細やかな視線の動きを見せるアップショットを切り返す。

そこに主人公の感情を代弁する音楽を添えてあって(芥川也寸志が担当)。

これは芸術作品ですね。

カメレオン俳優・市川雷蔵が、現代劇では放火犯の『炎上』、色男の『ぼんち』に続いてこの作品で被差別部落出身の小学校教師という難しい役に挑んでいる。

瀬川という人物に雷蔵がなりきっていて、役者魂を見せつけられる思いです。

見ていて、引き付けられるのは視線と立ち姿。

瀬川の内面を、微妙な「揺れ」で表現しているんですよね。

身分をかくして生きる瀬川は、いつばれるのかという不安が常にあって、伏し目がちな目線が多いんですが、そこに真実を言いたい、でも言えないという「迷い」も加わっている。

その心模様として、相手の言葉に反応する際に視線や立ち姿が揺れ、見る者を不安にします。

この主人公、この先どうなるんだろう? というこの映画の推進力になっているんですよね。

各エピソードが転がりながら、後半へタイトルともなっている破戒(約束を破って、恥じることのないこと)のシーンにつながっていきます。

インドのカースト制度アメリカの奴隷制度など、世界にも似たような根深い差別はありますが、日本の中でこの問題に向き合う機会はあまりない現代の状況。

以前同じようなテーマを取り扱ったドキュメンタリー『ある精肉店のはなし』を見ましたが、私たちが普段食べている精肉の裏側にある見えない日常みたいな部分をきちんと描いていて非常に勉強になりましたし、考えさせられました。

ドキュメンタリー『私のはなし 部落のはなし』も地域によって現在公開中。

映画を通して学ぶいい機会ですね。

木下恵介監督版も見てみたいと思います。

↓予告編

 
 

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