『ビッグ・ガン』(1973年 イタリア・フランス)
推進力のあるハッとするシーンに脱帽!
アラン・ドロン主演のこだわりの要素てんこ盛りのイタリアン・ノワール
今朝の1日1映画は『ビッグ・ガン』(1973年 イタリア・フランス)を鑑賞。
家族との平穏な暮らしを願い、殺し屋のトニー(アラン・ドロン)は足を洗うことを決意する。
しかし、それを知ったマフィア組織は彼を殺そうと刺客を差し向け、彼の妻と幼い息子が犠牲となってしまう。
悲しみの底で彼は復讐を誓い…。
『荒野の用心棒』でセルジオ・レオーネと共同脚本を務めたドゥッチョ・テッサリの監督によるアラン・ドロン主演イタリアン・ギャング・アクションです。
見初めてしばらくは先日見たフリッツ・ラング監督のフィルムノワール『復讐は俺に任せろ』のような展開だなと。
ですが、だんだん様相が変わっていって、ものすごい推進力を持って見進めて、最後の最後までドキドキしながら見てしまいました。
『復讐は俺に任せろ』では感情を描くシーン省略して、行動の中に感情を織り込むというスゴ技で見せていたんですが、こちらは「悲しむ」「怒る」などのシーンをちゃんと時間をかけて描いていて、見る者に直接的に訴える作りになっている。
その分、俳優に感情を表す演技が要求されるんですが、アラン・ドロンは無言で涙目になり、怒りを銃に込め、その表情に心を動かされるんですよね。
で、すごいと思ったのは、ハッとさせられるシーンを入れ込んであること。
カーチェイスもすごいんですが、風呂やスクラップ、水などを使って、予想をいい意味で裏切るびっくりするようなシーンがゴロゴロあるんです。
テーマもマフィア組織内の争い、復讐、恋愛と盛り込んであるんですが、それらがとても自然につながっていて、緊張感を作りつつ1本のストーリーラインが崩れず最後まで持続する。
これは推進力のあるシナリオだなと思いました。
また美術にもこだわりが。
最初の状況説明(セットアップ)のシーンで壁にモンドリアンの絵「コンポジション」が飾ってあるんです。
黒、白、赤、黄、青が升目になっているような絵なんですが、映画のセットやアクセントになる小道具が、すべてこの5色で配色されている。
最初のシーンでは、ギャングが真っ黄色のガウンを着ていて、トニーが撃つと、胸に血(赤)のシミが浮き上がる。
まるで生死を賭けたアクションペインティングを見ているかのようなシーンで、もうそこから最後まで繰り広げられる美的センスにノックアウトですわ。
『ゴッドファーザー』のような“幸せの絶頂の直後のどん底”なんかも織り交ぜてあり、マフィアの生と死の隣り合わせやその世界で生きていかなければいけない哀愁も匂わせてある。
これは掘り出し物映画かもです(主演がアランドロンなんで、有名作品だと思いますけどね)。
↓予告編
アラン・ドロン主演はこちらも見ました↓