カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『男たちの挽歌』(1986年 香港)

By May be found at the following website: http://www.movieposterdb.com/poster/9c44fb5d, Fair use, Link

本日から4Kリマスター版が全国で劇場公開!
男のロマン、気迫、友情&愛情、すべてに魅了される傑作。

今朝の1日1映画は『男たちの挽歌』(1986年 香港)を鑑賞。

香港マフィア内の権力抗争を背景に、組織に身を置く兄(ティ・ロン)と、彼の兄弟分である組の幹部(チョウ・ユンファ)、そして兄の逮捕に執念を燃やす刑事の弟(レスリー・チャン)。

これら3人の男たちの友情と確執をドラマチックに描く、香港ノワールの火付け役となったジョン・ウー監督による傑作アクションです。

久しぶりの鑑賞なんですが、いやー、ほんとカッコいい。

そして、ウルッときますね。

今回は映画表現としての特徴を見てみました。

まず、ハッとしたのが冒頭の、夢から覚めるシーン。

夜、就寝中にうなされて男が撃たれる夢を見た男が「キット!」と叫びながらガバッと起き上がり、窓から入る朝日の逆行となって背中が映るんですが、着ている白シャツが寝汗でぐっしょり、そこに透けて見えるのが筋彫のような入れ墨。

セリフが無くともこのシーンだけでこの男が堅気の者でないことが分かり、これから何が起こるのかを期待させる。

ファーストシーンで、もうこの映画の世界のジェットコースタ―の一番前に乗り込んだ自分がいます。

そこからは非常に早い展開で、警察VSマフィア、マフィア間の対立などの社会的背景に、兄弟間、友情間、恋愛、親子、それぞれの葛藤という私的関係をこれでもかというくらい入れ込んである。

「善と悪」「生と死」「愛情&友情」「プライド&成功」…てんこ盛りのテーマを早いスピードと音楽に乗せて、お話は感情の振れ幅を大きくしていきます。

アメリカ映画などと違うのは、やっぱり「情の深さ」。

身内を大事にするアジア人ならではの思いがあふれているんですよね。

そして同じアジアでも日本と違って大陸はストレートに思いを言葉にしてぶつけます。

言葉の端々に、俺はお前のことをこれだけ思っているんだ! とはっきり伝え、そこに葛藤が生まれる。

それらの情のある関係性に音楽が感情を補い、鑑賞者はその波に乗りながらラストまで映画という名のジェットコースターを楽しむことができます。

技法としては、カットの切り返し、ゆっくりと中心人物に寄っていくズーム、銃激戦のアクションシーンでのスローモーション、人が空中に飛び上がっている時に撃つなどの「動き+動き」の重ね方などが特徴的。

カットつなぎはクレーンでゆっくり人物を追うのではなく、早いカットをパッパッとつないでスピード感を出していますね。

アクションシーンには、「ガラスを割る」という動作がたくさん入っていて、車のフロントガラスなどを叩き割るというものから、頭を窓ガラスにぶつけて割る、そのガラスでさらに脅すなどを多用して迫力をだしている。

ドラム缶を銃で撃つと中から水が出てくるというのもリアルです。

あと重要なのが「体液」。

「血」の描き方としては、引きずる足に筋のようになって血の跡がついたりするのがリアル。

「汗」の描き方も多用で、香港は湿度が高いということもありますが、冒頭の寝汗、緊張した時の汗、走った時の汗など、その人物がどのような状況にあるかが汗で分かり、人物の心情をも表します。

また「小便」にまつわる話も出てきて、それが登場人物の強烈なエピソードとして描かれる。

派手なアクションに魅了されたり、ハードボイルドな粋なセリフにうっとりするその影には、見た目の細かい表現が隠れていて、その一つ一つがこの映画のリアルさを演出し、重厚さを形作っていることに気付かされます。

まだまだ書き足りないんですが、終わらなくなるのでこのあたりで。

今日から全国の劇場で公開。

スクリーンでも見たいですね!

PS:レスリー・チャンは1999年に「オーガストインヒロシマ」のコンサートで広島サンプラザに来広。5列目のチケットを持っていたのに地元コンサートの仕事で行けず泣いた思い出があります。

↓予告編

 
 

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村