『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年 台湾・香港)
女性剣士も大活躍!
中国の伝統的な音楽・衣装・雰囲気があふれた群衆剣劇
今朝の1日1映画は『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年 台湾・香港)を鑑賞。
時は明朝時代。
無実の罪で処刑された大臣の遺児の暗殺をもくろむ特務機関と、遺児を守る大臣の腹心たちの生き残りをかけた凄まじい死闘が、辺境の宿・龍門閣を舞台に繰り広げられる。
武侠映画の名匠・キン・フー(胡金銓)が台湾で撮り、東南アジア全域で記録破りのヒット、この種の剣劇製作の大ブームを興した快作です。
先日見たキン・フー監督の『侠女』は、ちょっとびっくりの思わぬ展開が面白かったんですが、こちらは王道と言うべきストーリー展開で面白い。
見どころはたくさんあるんですが、まず刺客たちとの攻防。
主人公は風来坊で何者なのかつかめない。
日本映画『用心棒』や『椿三十郎』の浪人スタイルのようです。
そんな主人公が、横暴する権威ある宦官組織に家族を殺された兄妹、少数民族出身で宦官にさせられた兄弟などを守りながら、一緒に悪を倒す剣劇です。
キン・フー監督作品では女性剣士が大活躍するんですが、この作品でも主人公に引けを取らないアクションで悪ととっちめます。
後ろからの攻撃を後ろ手にやっつける殺陣シーンはなかなかの見ごたえ。
みんな立ち回り的に、不意にやってくるフェイント攻撃を素早く察知して避けたり仕返ししたりする技に長けていて、見ていて、「今、何が起こったの?」というぐらい素早いアクションが展開して魅せるんですよね。
ワイヤーアクションは少なめですが、後半に少し見せ場があります。
次に、キャラクター。
登場人物を個性的にしてあって、風貌や衣装で群衆の中でメインキャラは誰かがすぐわかり、善・悪も分かりやすい。
宦官のトップは金髪で頬紅していますからね。
そしてロケーション。
室内のシーンはほぼ1か所の宿屋で行い、その他はロードムービーのように松林、砂利道、岩山などを進みながら昔ながらの山水画に登場する中国の原風景のような自然の中で撮影で行っています。
監督は300点あまりの昔の資料を読み漁り、当時の宦官の行列や衣装などを研究していて、かなりの再現力。
音楽も京劇のような音楽を入れているのでテンポがあって、見せ場はここですよ的な集中線のような意味合いも出している。
それまでの中国武闘映画は日本のサムライ映画の影響が強かったそうなんですが、この映画で独自のスタイルを確立したと言われています。
食事(火鍋)を囲むシーンでは毒が…というスパイ的なシーンも。
明王朝は中国史上最も激動の激しいスパイ戦争があった時代で、その時代を映画化すると面白くなるという監督の思惑が当たり、この名作を生み出したんでしょうね。
低所→高所へ移動、弱い敵からだんだん強い敵を倒していくなど、アクション映画の王道として楽しめる映画。
当時の香港の映画はラストシーンがどれも似ている気がしますがそういう文化なのかな。
ジャッキー・チェン以前の時代のなかなか見る機会がない台湾・香港映画にも名作がたくさんありますね。
PS:私が大好きな台湾の監督・蔡明亮の2003年の作品『楽日』(らくび)。閉館となる映画館の最後の1日を撮った映画なんですが、その映画館の営業最後の日に上映したのがこの映画で、ほぼ空の映画館での映画上映に選んだときに、この映画の存在がさらに不滅となりました。台湾の人にとって不動の名作なんでしょうね。
↓予告編
キン・フー監督作品はこちらも見ました↓