『プロジェクトA』(1983年 香港)
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真似は危険!
超人ジャッキーの技を“目撃”する傑作アクションコメディ。
今朝の1日1映画は『プロジェクトA』(1983年 香港)を鑑賞。
20世紀初頭、イギリス統治下の香港。
海軍警備隊のドラゴン(ジャッキー・チェン)が、ライバルの陸上警察のジャガー(ユン・ピョウ)、海賊の財宝を狙うフェイ(サモ・ハン・キンポー)の協力の下、海賊たちと繰り広げる戦いを描いた超コミカル・アクション大作です。
武道ものからアクションコメディーへ転換した、ジャッキー29歳時の命懸けのスタント(20数メートルもの時計台からの落下シーンでは首の骨を折り本当に死にかけた)の数々が見もののこの作品。
アクションコメディの金字塔ではありますが、改めて見ると早送りかと思うような息をつく暇もない数多くの細かくてスピーディーなアクションシーンが満載で、この動きがリアルにできる人って…この人達じゃないと無理だわと再認識させられます。
この唯一無二の超人的なフィジカル&CGを使わないリアルな再現力を持った人たちのこの映画から、それでも私たちにもできることは何かをなんとか探り出してみました。
まず早いカット割り。
緩急をつけた演技とか、余韻に浸るとか、この映画にはいい意味で皆無です。
余韻に浸ろうと思った瞬間に次のシーンのエピソードが始まる。
そのスピーディーなカット割りはアクション映画においてテンポを作ってくれて飽きさせませんね。
次にカメラワークや効果的なエフェクト。
特に「ホイップズームイン&アウト」を多用しています。
キャストの気持ちが動いた瞬間や何かを発見した瞬間に、ギュイーンと素早くズームイン。
まさに漫画の集中線のような役割が。
逆にアップショットから、それがなぜ起こったのか状況を説明する時に急激なズームアウトも多用。
コントのオチみたいな使い方がしてあり、面白い場面でよく使われています。
また、瞬間的な爆発的威力のある場面にはスローモーションも多用。
例の時計台から落ちるシーンは3回撮影して2回スローモーションにしてあり、落ちるのは一瞬ですが、その瞬間をスローモーションによってより劇的にしてあります。
爆破で人が吹っ飛ぶシーンにも使用してあって、より印象深いシーンに。
アクションシーンでは、ジャッキー・チェンの高速アクションにはそのままのスピードで撮影されているんですが、ユン・ピョウの格闘シーンやサモ・ハン・キンポーの跳び蹴りなどのシーンにはスローモーションを使用。
ジャッキー・チェンのアクションはその超人的なスピードが見ごたえがあるのでそのままに、あとの2人はスローモーションにすることによって破壊力が強調され、ジャッキーのアクションに引けを取らない演出になっていて、3人のアクションバランスが保たれているんですよね。
前半はコミカルで、チャップリンやキートンのようなエッセンスがちりばめられているんですが、後半になるにつれて個々のパワーがチームとなって倍増し、マルクスブラザーズのようなバランスでコミカルかつチームワークで敵をやっつけるという、構成として非常に見ごたえのある展開。
往年の無声映画のコミカルさがありますが、ジャッキー本人はビデオがなかったためチャップリンやキートンなどの映画を見ていなくて、これらのアイデアは独自で発想したそうです。
音楽は、吉本新喜劇みたいなキャストの登場音から、気持ちが昂るマーチのようなテーマ曲まで過剰でもなくちょうどいいバランス。
敵と戦うアクションシーンでは、優勢の時は音楽は付けずアクションに集中させ、劣勢になると音楽でそのファイトを盛り上げ応援するような演出があり、これは緩急が付いているなと勉強になります。
映画のテーマとしては、バディとの友情、任務遂行、イギリスの統治下の腐敗した官僚組織で起こる問題、と結構重層的な作り。
官僚と下っ端、警察と泥棒の、利害の一致のよる協力関係という二重構造も面白い。
子供の時は目まぐるしく展開するアクションシーンが楽しくて見ていましたが、こうやって改めてひも解いていくと、面白くなる要素がたくさん詰まっている文句の付けどころがない作品だと実感します。
昭和天皇の「続きが見たい」との言葉から『プロジェクトA2』が作られたという逸話も。
真似できないほどの超人映画ではありますが、その面白さのエッセンスはぜひ参考にしてみたいです。
↓予告編