『見知らぬ乗客』(1951年 アメリカ)
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じわじわから大興奮へ!
Wイメージが交差する、さすがヒッチコックと思う1本。
今朝の1日1映画は『見知らぬ乗客』(1951年 アメリカ)を鑑賞。
テニス選手のガイは、不貞な妻ミリアムと離婚して上院議員の娘アンと再婚することを望んでいた。
そんなある日、ガイは列車の中で見知らぬ男ブルーノから話しかけられる。
ブルーノはなぜかガイの事情を良く知っており、ミリアムを殺す代わりにブルーノの父親を殺して欲しいという“交換殺人”をガイに持ちかける…。
アルフレッド・ヒッチコック監督の傑作サスペンスです。
ヒッチコック作品を今まで数本観てきましたが、これはかなり面白いですね!
セリフで展開する密室劇みたいなのだと複雑さが増すんですが、これは動きがあって設定も非常に分かりやすい。
主人公テニスプレーヤーの独占や出世などの「欲」と、サイコパスによる殺人の「快楽」が対になり、螺旋のように絡み合い、フィナーレとなるスリル満点のアクションシーンまで、観客の感情を恐怖から興奮へと沸き立たせる、観る者を離さないこの構成。
ほんっと、映画の魔術師ですね!
数々の小道具が伏線になるというのはお決まりですが、決定的瞬間を間接的に「映り込み」で見せたり、群衆役の人々を使ってまるで「集中線」を作るような動きさせてみたり、対となる2つのイメージを見せ「善」と「悪」が表裏一体であることの暗喩を提示してみたりも。
不安をあおる音楽、ローライト、斜め構図、観客にヒントを与えるホイップズームなどサスペンスの要素も満載です。
それからすごいと思ったのは、アクションシーンにおける「弱者」の存在。
激しいアクションをしている人々の周りに、老人、子供、女性などをうまくストーリーに入れ込み、被害者にすることによって、アクションの激しさを対比的に描いてあるんですよね。
これで思い出したのが『戦艦ポチョムキン』の有名なシーン、“オデッサの階段”。
兵士たちの発砲に逃げ惑う人々を捉えた有名なシーンですが、一番心を動かされるのは、乳母車に乗った赤ちゃんがガタガタと階段を下りていくシーン。
「危ない!」とハラハラさせられる。
それと同じ効果をヒッチコックはうまーく映画の一番盛り上がるシーンに入れ込んでいて。
合成やミニチュアもたくさん使っていて、すべてをロケでやってる感じでもないんですが、どう見せたら観客の興奮が最高潮に達するかという設計がね、キチンとできている。
あー、もう素晴らしいの一言です。
心理的内面から動的なアクションまでが1本に詰まった、また最高の部類のサスペンス映画に出会ってしまった感じがしています。
↓予告編