『潮騒』(1975年 日本)
アイドル映画と思いきや、面白くなる仕掛けがたくさん!
今朝の1日1映画は『潮騒』(1975年 日本)を鑑賞。
伊勢湾の歌島に住む漁師の新治(三浦友和)は、水汲みをする見知らぬ少女を見かける。
彼女は村一番の金持ちである宮田照吉の初江(山口百恵)で、一人息子を失った照吉が婿を取ることにしたのだ。
強風で漁が休みになった日、新治は戦跡の観的哨跡で初江と会い、そのことを秘密にするが…。
監督は「伊豆の踊子(1974)」の西河克己、脚本も同作の萩原憲治がそれぞれ担当。
三島由紀夫原作の文芸作品の映画化ということで、重い感じがあるのかと思ったんですが大間違い。
オープニングからエヴァンゲリオンの次回予告時の曲みたいなアップテンポでウキウキの曲がBGMになっていて。
舞台が島の田舎町で閉鎖的な社会であるとはいえ、昨日見た憂鬱な田舎町の世界とは真逆で、ポップで明るいアイドル映画のはしりの感じがありますね。
初々しさが半端なくて、本当にキラキラしています(山口百恵はソフトフォーカスにしてあって天使のよう)。
2人が恥ずかしながら下着や裸のようになるシーンも。
大人気アイドルでも体を張っていた時代。
その覚悟に見合うだけのエロティシズムがあって、非常に納得感があります。
世界観はほんとピュアで、2人の心に闇がない。
そのまっすぐな雰囲気と奥ゆかしさが三浦友和と山口百恵にあって役柄にピッタリなんですよね。
お話としては恋人同士の漁夫と海女の恋愛で、「2人の心模様」を描いたシーンと、「障害や困難を乗り越えていく」シーンが素晴らしい。
まず「心模様」としては、映画の冒頭、両肩に天秤棒で桶を担ぎ水を運ぶ少女に出会う新吉→少女がバランスを崩し、水がバシャーッとこぼれる→潮騒が岸壁を打つ→タイトル文字、というカットの流れ。
「水」や「波(潮騒)」の動きを、感情の高まりを象徴するメタファー(隠喩)としてシンクロさせていて、言葉があまりなくとも2人の心の動きを理解できるようになっています。
またライター、焚火、囲炉裏などの「炎」も象徴的に使われていて、メラメラと燃え上がる恋心のよう。
天候である「暴風雨」や「嵐」も、主人公たちの行動を起こすきっかけに使われています(←天候を巧みに入れ込むのは是枝裕和監督もですよね)。
次に、「障害や困難を乗り越える」シーン。
「これができたらご褒美にこれをあげます」という、条件を与えて成長させるという、外発的動機付けの入れ込み方がうまい。
ご褒美を目の前にちらつかせて、それを追う姿を描くことは、それを入手した時の主人公の姿を想像しながら見進めることができて、非常に推進力があります。
主人公が必死で難題をクリアしていく様子は姫を助けるRPGゲームや当時の恋愛バラエティー番組みたいで面白い。
映画の中だとはいえ、障害や困難を乗り越えた2人が結婚したいという気持ちになったのが分かりますわー。
あとは「魚」の使い方や、コントロールできない行動をする「虫」の使い方、いい意味で予想を裏切る展開にもハッとさせられます。
初井言栄の肝っ玉母さんな演技も心を打たれる。
ただのアイドル映画と思ったら、面白くなる仕掛けが随所に忍ばせてある、意外に見ごたえのある映画です。
↓予告編
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