『頭上の敵機』(1949年 アメリカ)
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「異動するのは簡単だが、義務からは逃れられない。運命を受け入れるしかない…」(映画より)
”中間管理職”の気持ちがよく分かる作品
今朝の1日1映画は『頭上の敵機』(1949年 アメリカ)を鑑賞。
第931爆撃隊に赴任して来た鬼准将(グレゴリー・ペック)。
彼の強引なやり方に隊員たちは不満を抱くが、やがてドイツ本土爆撃という目的の下に彼らの間に強い連帯感が生まれる……。
実話を基に製作され、いつ死ぬとも判らない隊員の心情と指揮する者の苦悩が見事に描かれたヘンリー・キング監督による空戦映画の名編です。
先日見たクリント・イーストウッド監督・主演の映画『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』と同じような感じはありますが、こちらは軍の組織形態に絞った形で展開。
兵士といかに向き合い育成し、最大の成果を上げるかという「人材育成」を描いた作品です。
なので、今でも軍や企業のリーダーシップの基本を教える教材として使われているそう。
アメリカ空軍やドイツ空軍が撮影した実戦の模様を捉えたフィルムを入れ込み、戦争を忠実に再現した内容となっています。
「准将」という立場の、軍でいうところの“中間管理職”の男性が主人公で、上司の命令と部下の育成に挟まれ、命令を遂行するため兵士たちをどう指導して目的を達成するか。
目的達成のために兵士をモルモットのように使うと不満が出るし、兵士に感情移入しすぎると目的が達成できない…。
その葛藤を皮肉も交えて描いてあり、中間管理職の苦悩がよーく分かります。
飛行機や機械ではなく人間に主眼を置いたこの作品。
音楽は最初と最後しかなく、会話を中心に物語が進み、見終わったあとの余韻も残る。
戦争の舞台裏ではこのような指示系統がなされ、兵士を扱っていたということを知ることができます。
兵士も「異動願い」が出せるんだというのも初めて知りました。
カメラはミドルショットの室内クレーンが多いですが、目線のみで魅せる演技や実際の戦闘映像とのコラージュなども見どころ。
軍という組織が人間を狂わしていく様子とともに、置かれた場所で臨機応変に考え対応する大切さなど、中間管理職でなくても組織に属する身としては考えさせられる深い映画です。
PS:空軍施設の造りが半円形の“かまぼこ形”で、広島市南区比治山にある、アメリカ陸軍施設を利用して開設したABCC(現在「放射能影響研究所」)と同じ。
なんだか身近に感じますね。
↓予告編