『復讐は俺に任せろ』(1953年 アメリカ)
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抑制された感情、一瞬のこぼれる表情…。
一人の元刑事がギャングに挑むノワール・サスペンス
今朝の1日1映画は『復讐は俺に任せろ』(1953年 アメリカ)を鑑賞。
警官が自殺した。
ダンカンというその警官はギャングと内通していたのだ。
ところがダンカンの妻(ジャネット・ノーラン)は警察に嘘の報告をし、遺書を利用してギャングをゆすっていたのだった。
殺人課のバニオン(グレン・フォード)は疑惑を持ち捜査し始めるが、警察上層部にもギャングの勢力が及び、圧力がかかり捜査から外された上、妻を殺されてしまう。
復讐を誓ったバニオンは、たった一人で巨大組織に立ち向かう…。
ウィリアム・P・マッギヴァーン原作小説を映画化したフリッツ・ラング監督によるサスペンスです。
先日見たフリッツ・ラング監督『激怒』はイケイケな怒りに見ごたえがありましたが、こちらはサスペンスとしての静かな怒りが堪能できる作品ですね。
特徴的なのは主人公があまり直接的な感情表現をしないこと。
特に怒りや悲しみのような、感情表現があまり描かれない。
その場面すら描かずすっ飛ばしてあって、数時間後、数日後に話が飛び、その間に何があったかを会話で語る。
なので、非常にクールな印象は受けるんですが、その分、セットや別の会話、一瞬の表情で表現してあって、何があったかは十分伝わります。
感情の盛り上がりを画として見せることによって観客の涙を誘う…というのは昨今の映画では当たり前のようにありますが、当時のハリウッド映画では「感情」より「行動」を描くことを重視し、なんとか作品時間を90分~120分に収めるということをしていたようで、それでも伝わるカット割りというのを考えられているんでしょうね。
男女のセリフのやり取りはハードボイルドなかっこいいものが多いんですが、緩急の付け方にびっくりするような仕掛けが。
幸せな時間に、ものすごい不幸がいきなり訪れる。
『ゴッドファーザー』の、結婚式の裏で殺しが…みたいな、人生の最高潮にどん底が訪れるというのが描かれていて、幸と不幸が表裏一体の人生が描かれます。
(『ゴッドファーザー』がこの映画からヒントを得ているそうですね)
人間関係に渦巻く“欲”の描き方も深いし、復讐劇としてすごいやり方でを回収していくというのも爽快感が。
それぞれの登場人物を深読みしていくともっと深い味方もできるようで、結構練られた脚本になっていると思います。
物語の構成や人物の描き方が勉強になる1本です。
↓予告編