カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『月蝕』(1956年 日本)

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画像:リンクより

運命の女(ファム・ファタール)を月丘夢路が演じるクールな一本。

今朝の1日1映画は『月蝕』(1956年 日本)を鑑賞。

「そう、あの女はもういない-あの唄声あの眼差し-あの熱い唇に触れることはもうないのだ」

東京のナイト・クラブ“ブルー・スカイ”の殺人事件現場でバンド・マスター和馬(三橋達也)はそうつぶやいた。

殺された女は怪しいまでに神秘的な美しさをまとった綾子(月丘夢路)。

そんな彼女の周りにはフィリピン・スターズのバンドマスター、レオ(岡田真澄)とウエルター級のボクサー松本(石原裕次郎)という二人の男がいた…。

男への復讐に身をやきながら自らも傷つきゆく弱い女。

恋愛心理の微妙さを描き出した石原慎太郎原作を井上梅次が映画化した作品です。

見終わって、じわーっとする。

石原慎太郎原作ではありますが、若者のほとばしるエネルギーを描いたいわゆる“太陽族映画”とは違った、ハードボイルドで大人な作風ですね。

冒頭に事件が起こり、何があったのかを探るサスペンス的な展開。

主役は5人の男たちを虜にする魔性の女・綾子役の月丘夢路

ちょっと人間関係がごちゃごちゃしているので整理が必要ではありますが、バンド・マスター和馬(三橋達也)を中心に、綾子自身が語るエピソードに加え、5人の男性それぞれの綾子とのエピソードから彼女の実態を浮かび上がらせていく感じです。

それにしても月丘夢路さんって、すごい女優オーラをまとった方ですね。

当時34歳で、今活躍している女優で34歳というと、新垣結衣さん、吉高由里子さん、榮倉奈々さん、佐々木希さんというところ。

この月丘夢路さんような大人の雰囲気を持つ方って現代ではなかなか見当たらない気がします。

女性ではないですけど、美輪明宏さんの持つオーラぐらいの雰囲気があるかも。

低めの声で静かにしゃべり、決して走らず、ドレスライクなワンピースを着こなし、高いヒールでコツコツ歩く。

印象的なのは前半のキスシーン。

綾子は目を開けてます。

感情には表さないけど、男性に対する復讐心がメラメラしているのが分かる。

生きているけど、この世にいない人のような浮遊感もあって。

だけど男性なしでは生きていけない弱さを持っていて、それを感じ取れる男性が彼女に寄って来るという。

残された男性たちには一生彼女との思い出が脳裏に焼き付く。

そんなファム・ファタールを月丘さんが好演しています。

監督は石原裕次郎の大ヒット作品『嵐を呼ぶ男』の井上梅次(いのうえうめつぐ)。

この映画の2年後に、月丘夢路さんと結婚されています。

技術的な面では、見ていて、画的に画面アスペクト比(画面比率)を意識する構図になっていることに気づかされる。

真四角に近いスタンダード・サイズ(1.33:1)で、昔の白黒映画にはよくあるサイズなんですが、この映画を見ていると、人物の配置や構図がキュッとこの四角の中に納まるように配置してある感が強いんですよね。

日常の動きをフレームに切り取るというよりば、このフレームの中で世界観を作り上げている感じ。

カウンターで奥の人と手前の人がしゃべってるんですが、2人の間に距離を取って離して配置した奥行きのあるカットとか(コロナ禍の今、ニュース番組のスタジオなどでよく目にしますが)、テーブルに座る5~6人が「かまくら」に入っているかのようにギュっとコンパクトに近寄ってフレームに納まるように座っているカットとか。

映画を撮るときにはフレームに収めるために、役者さんに近づきすぎというくらい近寄ってもらうなど、不自然な距離感や構図にすることがよくあるんですが、この映画を見ていると、フレームの外で何が起こっているかというのはあまり関係なく、そのフレーム内を完璧な構図にして魅せたいのかなーと個人的に感じました。

それくらい写真のようにバッチリ構図が決まっている。

カッコいいです。

昨年月丘夢路さん主演の『ひろしま』(1953)を見ましたが、先生役も素晴らしかったし、幅のある役者さんですね。

月丘夢路作品もいろいろ見てみたいです。

PS:来月広島市映像文化ライブラリーで「生誕100年月丘夢路特集」が。
こちらもチェックしてみたいと思います。

 
 

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