『ハムレット』(1948年 イギリス)
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「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」で有名なアカデミー賞受賞作。
主人公ハムレットのセリフが心にグサグサ刺さります。
今朝の1日1映画は『ハムレット』(1948年 イギリス)を鑑賞。
亡き父王の弟である新王と母が再婚し、苦悩する王子ハムレット。
ハムレットは父の亡霊に会い、その死が弟である新王に毒殺されたためと聞かされる
彼は復讐を誓い、精神を病んだふりをして機会を待つ。
ある時、旅芸人一座が城にやって来た。
ハムレットは父を殺した叔父王と、その后となった母親が見守る中、役者たちに先王暗殺の一部始終を演技で再現させ…。
ウィリアム・シェークスピアの舞台劇を、イギリスの名優サー・ローレンス・オリヴィエが自作自演で映画化した名作で、アカデミー賞作品・主演男優・美術・装置・衣装デザインを受賞のほか、ヴェネツィア映画祭グランプリ、主演女優賞受賞しています。
「生きるべきか死すべきか、それが問題だ」のセリフで有名。
古典的超名作だけに、子供の時に公文の英語教材で翻訳したり、たぶん舞台で見たことがある気もするんですが、まったく内容を覚えていないという…ことで初見です。
155分あるんですが、もともと4時間のシナリオを2時間半に詰め込んだだけに、濃いです。
息抜きのシーンがない。
演技にも抜け目がなく、監督も務めたローレンス・オリヴィエが精魂込めた作品だということが分かります。
物語の構成としては、「復習劇」で、霊の助言によって主人公が行動するという、古典作品で多く見られるパターン。
日本の「能」もまさにそうなんですが(映画界における広島風ファンタジーも)、この作品はその原型とも言うべきスタイルなんでしょうね。
セリフは戯曲的、舞台的で、ナレーションも含め心のうちを全てセリフにしてある感じで独り言も多いです。
比喩表現が多用された美しい言葉で綴られている分、映画としての演出はカメラワークを駆使するよりも、光と影、衣装や音楽など、装飾的な部分を魅せる方に盛ってある気がします。
個人的に一番響いたのは、ハムレットによる父を毒殺した証拠をあぶりだすための劇(茶番劇)の演出シーン。
そこでハムレットの演劇論がセリフで展開されるんですが、これがなかなか深いんです。
・芝居は自然さを保つこと。
・芝居の目的は、今昔を問わず自然に鏡に写し出すこと。美を美として、醜を醜として、そのまま時代の鏡を写し出すこと。
・大衆を意識しすぎると、玄人を失望させる。本当に大切なのは、一人の玄人なのだ。
・評判だけいい悪い役者もいる。キリスト教徒か、異教徒か、人間とすら思えぬ奇声を出し演じるだけのダメな人間だ。
・道化に即興させるな。観客を笑わせようとして、自分を笑い物にして、大事な芝居を忘れるな。そんなのは使い物にならん。
いやー、ハムレットの中にこんな演劇論が潜んでいることは知りませんでした。
「自然」や「鏡」とい言葉はいろんな意味に取れ、このセリフもさまざまな解釈があると思うんですが、映画制作人としては考えさせられますね。
その他、ハムレットの母親を演じるアイリーン・ハーリーは、映画差撮影時29歳で、彼女の息子を演じるオリヴィエは40歳だったとか、ハムレットの父の幽霊の声は、ハムレット役のオリヴィエがセリフを録音し、それを減速して再生することで不気味な演出を与えたとか、オリヴィエはオフィーリア役のヴィヴィアン・リーとは妻帯者同士の恋仲だったとか(のちに結婚)、興味深い撮影エピソードも満載。
この作品が絵画のモチーフとしてやリメイク映画、ミュージカル、オペラなどあらゆる方面で愛されるわけが少し分かった気がします。
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↓予告編