カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『昼顔』(1967年 フランス)

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斎藤工×上戸彩のヒットドラマの元ネタ。
女性の欲望や内面を見事に描いたベネチア映画祭金獅子賞作品。

今朝の1日1映画は『昼顔』(1967年 フランス)を鑑賞。

若い外科医の妻セブリーヌは、外見は貞淑な女性だったが、内面には激しい情欲が渦巻いていた。

淫らな妄想に駆られたあげく、彼女は、昼間だけの娼婦として欲望に身をまかせるようになる……。

昼は娼婦、夜は貞淑な妻の顔を持つ若き人妻の二重生活をルイス・ブニュエル監督がカトリーヌ・ドヌーブ主演で描き、1967年・第28回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した作品です。

この映画が元ネタで数年前に話題になっていた斎藤工×上戸彩のドラマは全然見ていないのですが、友人におすすめされて鑑賞。

馬車に乗った夫婦が鈴の音とともに遠くから左斜めに向かってくる静かな構図のオープニング。

人物等が「左に向かう」というのは、心理的に、過去や回想など、時間を逆行すると言われていて、このシーンだけで、この作品が何か不思議で監督のこだわりが描かれた映画だと分かります。

主人公の主婦の空想と現実が入れ替わりで描かれていて、空想はかなりマゾヒスティックな性向を持つ彼女。

現実は貞淑な医者の妻。

夫とは性的に不満があり、それを叶えるべくドキドキしながら売春クラブの扉をたたきます。

ちょっと人には言えない性的嗜好っていうのかな、それらを描くと過激な一見内容に映るんですが(『ドライブ・マイ・カー』にもそういう描写がありますが)、名作にはそんな描写が結構多い。

主人公の妻が社会的な役割として演じている「医師の妻」「品ある女性」などの“仮面”を、「性」という非常にパーソナルで私的な面を通して剥がすことにより、その人物の心の内面を露にすることができて、映画を見ている観客の社会的仮面をも外す役割があるんですよね。

それによって、映画の世界と観客との間で、「秘密を共有」した気分になれる。

これだけでもこの映画が名作たるゆえんが分かる気がします。

かつ、主人公の妻の表情の変化の演技+カメラワークが素晴らしい。

最初は怯えて固まっていた表情や視線が、話が進むにつれ笑顔になる。

またカメラは主人公の視線や表情を捉えて、主人公が何を見て、彼女の目の前で何が起こっているかを想像させ、次のカットでハッとさせるような流れがあって。

ホイップズームも重要な部分で使うなど、そのあたりの見せ方が非常に推進力があります。

冒頭で人物等が「左に向かう」ということは希望や未来を表す「右に向かう」シーンも出てきます。

カトリーヌ・ドヌーブ24歳の美しいスタイル、若々しいヘアやダブルラインで彫りを深くしたメイク、身体の線をそこまで見せない品のある衣装、それを脱いだ時の純白の下着、裸にまとう黒いベール。

音楽は全くないので、主人公の「夫にバレちゃいけない」&「心の仮面を取る私」という緊張感が満載です。

後半はまたバイオレンスも交じってきますが。

ただの不倫映画だと思ったら大間違いの、女性の心や欲望を見事に表現した映画ですね。

↓予告編

 
 

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