『運び屋』(2018年 アメリカ)
孤独な90歳の老人が“運び屋”に…。
実話を元にクリント・イーストウッドが監督&熱演。
今朝の1日1映画は『運び屋』(2018年 アメリカ)を鑑賞。
かつて園芸家として名を馳せた90歳のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、家族を二の次にして仕事一筋に生きてきた。
商売に失敗した果てに自宅を差し押さえられそうになる。
そのとき彼は、車で荷物を運ぶだけの仕事を持ち掛けられる。
それを引き受け、何の疑いも抱かずに積み荷を受け取っては運搬するアールだったが、荷物の中身は麻薬だった…。
クリント・イーストウッド監督・主演による実話サスペンスです。
イーストウッド監督作品を何作か見てきましたが、どれも人間ドラマが秀逸で、やっぱりこの映画もジワジワ来ますねぇ。
まず、まさかこの人が?!という人の犯罪。
私が実際に目撃したことがあるのは、親子連れのスリ、ベビーカーの親子運び屋で、善良&弱者を装っているので一見分からないんですよ。
この映画も90歳のシワシワの老人が、まさか大量の薬物を運んでいるとは!という意外性が面白い。
主人公アールは朝鮮戦争の退役軍人で、戦争の苦難を乗り越えてきた経験から、ギャングたちに物怖じしないノー天気なメンタルの強を持っていて、若干おびえつつも楽しんている風もある。
また若いギャングや警官の人生の悩みを、豊富な経験に裏打ちされた教訓のような言葉や行為で助けていく。
ある意味、人生のスーパーヒーローでもあるんですよね。
主人公はお金に困りつつも、アメリカの中流を生きてきた、たぶん共和党支持者のような普通の白人。
家族より花の栽培事業に夢中になりすぎて家族からは慕われていないですが、黒人やスパニッシュ、男性のような女性バイク乗りたちと冗談交じりでコミュニケーションを取っていくのも非常に面白い。
ちょっとしたきっかけで「欲」に手を出してしまった老人の生き様と、周囲の人間との、善と悪、お金と時間、多人種、LGBTQ、などが描かれていて、俯瞰で見ればアメリカを象徴するような映画だと感じます。
映画の構成としては結構前半からハラハラドキドキが始まって、後半にギャング、警官、家族などのエピソードが少しずつ展開していき、非常に見やすいです。
花を愛する人に、本当の悪人はいないのではないか(西川美和監督『すばらしき世界』でも元やくざの主人公三上が持つ花が印象的)、と思わせるようなリリー(ユリ)栽培の演出も映画に華を添えます。
カラーグレーディングはブルーグレーで引き締まった色合い。
音楽は、主人公アールが運転しながら歌う歌や、エンディングの挿入歌の歌詞など、劇中で流れる歌の歌詞が人生の応援歌みたいな内容でグッとくるんですよね。
♪老いを迎えいれるな/もう少し行きたいから/~/妻に愛をささげよう/友人たちのそばにいよう/日暮れにはワインを乾杯しよう~
またいい映画を見させてもらいました。
↓予告編