『疑惑の影』(1942年 アメリカ)
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憧れの叔父がまさか…。
ヒッチコック監督による戦時中製作の心理スリラー。
今朝の1日1映画は『疑惑の影』(1942年 アメリカ)を鑑賞。
カリフォルニア州の田舎町サンタローザで暮らすニュートン一家のもとに突然チャーリー叔父さんが訪ねてくる。
ニュートン家の長女チャーリーは同じ名前の叔父の来訪を喜んでいたが、やがて2人の探偵が訪ねてくると次第にチャーリー叔父さんに秘密があるのではないかと疑い始め……。
アルフレッド・ヒッチコック監督による心理スリラーです。
1942年公開って、第二次世界大戦中ですよね?
当時の日本の劇場では戦況などを伝えるニュース映画、自然や人々の暮をとらえた文化映画の上映が務づけられていて、娯楽映画はご法度の時代。
そんな時に普通に映画が撮影できて全米の劇場で公開できていることに驚きです(興行的には失敗)。
映画の中に戦争の影はこれ一つ出てこない…と思いきや、図書館で新聞を見るシーンで "Hideki Tôjô Speaks for..."(東条 英機が語る…)という見出しが!
なんか不思議な感覚です。
映画は、普通のファミリーの家庭に尋ねてきた大好きな叔父が、殺人犯かもと疑惑を持つ話で、好意と疑念の葛藤がまさに印象的な「影」とともに描かれています。
アクションはありますが、話としては落ち着いた展開で、セリフの一つ一つに当時の習慣(帽子はベッドの上に置かないなど)や、男女の役割などが垣間見れて面白い。
また、ファミリーの父の友達がことあるごとにやってきて、完全犯罪はどうやったらできるかについて話しに来るのもなんだか“おつ”です。
観客へ犯人のヒントを与えるクローズアップや歩くようすを前から撮たり、主人公のショック具合を表現するのに、カメラを急激なクレーンで上に移動させたり、斜めショットを使って疑惑を表現したりとやはりヒッチコックと言わせるカットも多い。
映画とは一見関係ない、男女が次々とくるくる回る社交ダンスシーンも不思議な感覚になります。
犯罪者はなぜ犯罪者になってしまったかの言及も余韻を与えます。
元ネタは実話で、 「ゴリラマン」として知られる1920年代後半の連続殺人犯であるアール・ネルソンの実話に基づいていました。
またこの映画は、韓国の監督パク・チャヌクの2013年のハリウッド進出映画「イノセントガーデン」にも影響を与えているそう。
そっちもぜひ見てみたいと思います。
↓予告編