『雨のしのび逢い』(1960年 フランス・イタリア合作)
ジャンヌ•モロー×ジャン=ポール・ベルモンド
静かな街で起こる静かな出来事
今朝の1日1映画は『雨のしのび逢い』(1960年 フランス・イタリア合作)を鑑賞。
子供にピアノを習わせ、変化のない毎日を送っている資産家の妻アンヌ。
ある日ピアノ教室の1階のカフェで、殺された女性の最後の声を聞いてしまった。
この事件のことをある男性に相談するのだが……。
『二十四時間の情事』のシナリオを書いたマルグリット・デュラスの小説を映画化した心理ドラマです。
なるほど。
前半の流れは事件性を帯びていて興味を引き付ける展開。
後半は若い労働者に惹かれていく資産家の人妻という格差愛と、人妻はカフェでの殺人事件が「なぜ女性が殺されたのか」という部分を自身に絡めながら、愛を渇望している様子が静かに描かれ、2人の心理を読み取っていく流れになります。
セリフや場面、登場人物は少ないですが、2人の物理的な距離、立ち位置、手のしぐさ、視線、カメラのズームや引きの構図、小道具などがそれを見事にフォローしている感じ。
タイトルだけ見ると、激しい愛っぽい感じがありますが、見た目はすごく静かでスロー。
しかも男性側に理性がある。
立ち位置も男性が女性を見るときに、子供を見守るように、上から見下ろす構図なんですよね。
男性の方が若いけど、この人妻が精神的に子供であるというのを立ち位置などで表現されているのが興味深いです。
また子供に対する態度にも、この人妻の母親として子供に対する興味の薄さが表れていて。
恋愛ものだけど、一人の女性の内面をそっとあぶりだしているところがちょっと怖いというか、裏テーマでもありますね。
ジャンヌ・モローはこの映画でカンヌ映画祭の最優秀女優賞を受賞。
殺風景な港町、資産家の豪華な料理、廃墟のカフェ、風、船、マグノリアの花、一人で飲むワイン…。
多くは語られませんが、映る物それぞれが意味を持ち主張する映画という気がします。
↓Pascal RinaldiのアルバムのPVに映画が使用されています