カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『巡礼の約束』(2018年 中国)

他人を祈ることで自分を癒す。
チベットの大草原と家族の心の機微。

今日の1日1映画は、広島市映像文化ライブラリーで開催中のチベット映画特集で、『巡礼の約束』(2018年 中国)を鑑賞。

チベット人監督作品として日本で初めて劇場公開された「草原の河」のソンタルジャ監督が、聖地ラサへの巡礼の旅に出た妻と家族の姿を描いたヒューマンドラマです。

チベット遊牧民の夫婦や子供に巻き起こる出来事を通して、セリフは少なく、言葉にならない微妙な感情を丁寧に描いた作品。

見始めて、大草原の圧倒的な風景、原色の糸で刺繍を施した民族衣装、火を起こし、粉みたいなものをふりかけ念仏を唱えるという、日本の都市で暮らす私から見たら全くの非日常の世界がスクリーンいっぱいに広がっていて、それらに目を奪われ、ストーリーがなかなか入ってこないという現象が。

そして、「五体投地」(ごたいとうち)による巡礼。

五体投地」とは、仏教徒が行なう敬礼法で、初めに両膝、つぎに両肘を地につけて、合掌して頭を地につける最敬礼。

3歩進んでは平伏すという“しゃくとり虫”のような格好を繰り返して進むので、牛歩ぐらいのスピードでなかなか進まないんですが、これがね、もうお遍路さんなんか比べものにならないくらいの過酷さなんです。

それで2,500kmぐらいの距離を火を起こしキャンプみたいにテントを張って泊まりながら何日もかけて進むという。

自分のためではなく、愛する人や大切な他人のために祈ることが生活の中に普通にあるという価値観。

大自然の中では、人間の存在はとても小さいものであり、自然の営みの流れを読みながら、それに逆らわず暮らす姿に感銘を受けました。

映画が進むにつれ、一筋縄にはいかない家族の関係性や問題が明らかになるんですが、その問題解決の方法として「祈り」がある。

祈ることで願いを叶えるというよりは、気持ちを穏やかにするために祈るという、祈ることがある意味「癒し」の効果を与えるということが分かります。

そして、伏線的に小道具を使ったラストカットで大号泣。

会場中すすり泣き。

いい映画を見させていただきました。

上映後の広島大学の根本裕史教授のチベットのお話も、チベットの文化がよく理解できました。

3/30に上映がある根本先生おすすめの『タルロ』も見たいなぁ。

↓予告編

 

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