『ラースと、その彼女』(2007年 アメリカ)
もしも等身大のリアルドールに恋をしたら?!
『クルエラ』の監督が描くハートウォーミングな物語
今朝の1日1映画は『ラースと、その彼女』(2007年 アメリカ)を鑑賞。
幼いころのトラウマから人とのつながりを避けて生活し、毎日地味な仕事に従事する青年ラース(ライアン・ゴズリング)。
そんなある日、彼はガールフレンドを連れて自分を心配する兄夫婦(エミリー・モーティマー、ポール・シュナイダー)と食事をすることに。
しかし、ラースが連れて行ったガールフレンドとは、インターネットで注文した等身大のリアルドールだった…。
アカデミー賞脚本賞にノミネートされた、ハートウォーミングな人間ドラマです。
見始めて、是枝裕和監督&ペ・ドゥナ主演の、女性の「代用品」として作られた『空気人形』(2009)と似た、性的な要素を持つ話なのかなと思ったんですが、違いました。
人形を人間だと思い込むぐらい真剣に恋をしてしまっている青年が主人公。
主人公としては、かなりの変化球です。
ですが、この変化球を会社や地域の人々が非常にやさしく受け止める。
リアルドールが社会の中で機能するくらい。
先日見た濱口竜介監督の『偶然と想像』の3番目の話と似た雰囲気があって、ほっこりするんですよね。
一見異質なんですが、見た目で判断しないというか、彼の心の中までみんなが理解しているんです。
ある意味ファンタジーと言えるかもしれないんですが、このやさしさは非常に心地よい。
まるで、お笑いの”ぺこば”を見ているかのような感覚。
ストーリーを導く“狂言回し”の役どころとして、町医者の女医(トリシア・クラークソン)がいて、リアルドールを診察台に乗せて診察する一方で主人公ラースの心の中を探り、また彼女の心の内も描かれ…と、面白い存在です。
兄は父親のような存在として描かれていて、「誠実な人が救われ、慕われる」という人間として大切なことは何かを話すシーンは、この映画のテーマともなっています。
撮影技法としてはシーンつなぎが面白く展開するのと、心の動き=カメラの動きで連動していたり、即興の演技も取り入れられていたりと、主人公の感情を受け取りやすい。
シュールなように見えて、静かな感動がある、主人公の第一歩を後押しするような作風が素敵な作品です。
↓予告編