『プレイタイム』(1967年 フランス)
By The poster art can or could be obtained from the distributor., Fair use, Link
もう1回、大スクリーンで見たい!
そんな、隅々まで魅せる映画です。
今朝の1日1映画は『プレイタイム』(1967年 フランス)を鑑賞。
アメリカ人観光客がオルリー空港に到着し、パリ観光へと出かけて行く。
仕事の面接を受けようとするユロ氏は、近代的なビルディングの中ですれ違いを繰り返し、担当者と会うことができない。
街をさまようユロ氏は、開店したてのレストランでアメリカ人観光客の女性と出会うのだが…。
フランスを代表する映画監督であり、喜劇役者でもあるジャック・タチによる超大作です。
コメディーの他は何にも前情報なく鑑賞。
ほほう。なるほど。
主人公の気持ちに共感して展開するタイプの分かりやすいストーリーはなくて、たくさんの人が出てきてそれぞれがいろんなことをしています。
コメディーなんですが、ガハガハ笑えるんじゃなくて、クスっと笑えたり、たまに声が出て笑えたり。
Mr.ビーンとか、ドリフっぽさもあります。
個人的には映像の美しさに見とれてしまいます。
1967年の映画で、時代設定や衣装は当時の雰囲気なんですが、映像が非常にクリアで、昔の映画を見ている感じがしない。
調べてみると、通常の35mmフィルムではなく、その倍の70mmフィルムを使って撮ってあるんですね。
どうりで。
また主要シーンの高層ビルや博覧会場、アパート、オフィスは、2500平方メートルの巨大なセットを作って撮影されたとのこと。
エリザベス・テイラーやソフィア・ローレンを主役にしてギャラを払うよりは安上がりだとして、独自の発電所も建設し、費用は1700万フラン、撮影期間も丸3年ですよ。
その分エキストラは等身大の切り抜き写真を使用して、エキストラのお金を節約したシーンも。
私はまったく気づきませんでしたわ…。
前半の無機質なシーンには無彩色に赤と緑のアクセントカラーを、後半の人々の人間味が出てくるシーンには色をたくさん配色。
前半は直線、後半は曲線を意識した動線デザインという、もう映画というよりアートです。
アートのように楽しめるかどうかでこの映画の見方がぜんぜん違ってくる。
技法としては、とことん「ロングショット」。
カメラを人物から遠い所に置いて、人物の周辺の環境までしっかり魅せる方法です。
70mmフィルムを使うことで隅々までくっきりはっきり見えるのに加え、ロングショットによりフレーム内で同時に起きているいろんな出来事を見てほしいという監督の思いが非常に明確に伝わる演出。
大人数が出ているシーンでは、主人公ユロ氏がどこにいるのかな?とつい探してしまう、「ウォーリーをさがせ!」のような楽しみ方もできます。
「ロングショット」というのは全体を見せるにはいいんですが、そればかりだと視覚的にメリハリがなくなってしまうという欠点も。
タチ監督はそこを「音楽」でカバーしています。
なかなか小粋で面白い選曲なんですよね。
セリフは見てわかるくらいアフレコが多い印象。
たぶんねー、映画館で見た方がきっと面白いんですよ。
大画面で、画面の隅っこに映ってる面白いことをしている人を見つけて笑ったり、アートな部分を発見したりして存分に楽しみたい!
またひとつ、映画の楽しみ方を知りました。
↓予告編