『SHAME -シェイム-』(2011年 イギリス)
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セックス依存症の男の苦悩と孤独。
絵作りがアーティスティックです。
今朝の1日1映画は「SHAME -シェイム-」(2011年 イギリス)を鑑賞。
ニューヨークを舞台にセックス依存症の男の苦悩を描き、2011年・第68回ベネチア国際映画祭でマイケル・ファスベンダーが主演男優賞を受賞したドラマ。
ニューヨークでエリートサラリーマンとして働くブランドン(マイケル・ファスベンダー)は、セックス依存症から抜け出せずにいた。
そんなブランドンのもとに、シシー(キャリー・マリガン)が転がり込んでくる…。
性依存症の男性が主人公ということで、どういう感じなのかドキドキ。
かなり精神的にも肉体的にもハードで、常に女性を追い求めていく姿が痛々しくもあり、切なくもあり、だんだん表情がやつれていく感じもリアルに演じられています。
お話として、見進めていくうちに関係性が分かったり、伏線のようなモチーフがあったりするので、詳しくは書かないです。
依存症に対して医者が出てきてどうこうというのはなく、主人公自身や彼の周りの人々の行動を見ながら、微妙な心の変化や揺れ、見えている者の景色を鑑賞者が探していく感じの、感覚的な映画になっています。
印象的なのは、その「配色」と「構図」
まず、冒頭の1シーンでノックアウトされまして。
裸でグリーンのシーツのベッドに横たわったグリーンの瞳の男性。
しばらく上を見上げて、立ち上がると変化が…。
衣装やインテリア、照明の色を白&グレー&ブルーグリーンで統一されていて、非常に無機質な感じ。
カラーグレーディングもブルーグリーンが主。
そこにポンとダークレッドがポイントとして配色されます。
補色(反対色)をアクセントに使ったその配色が、もう、オシャレで。
それから構図としては「三分割法」。
元々は18世紀から伝わる絵画の構図ですが、映画にもよく使われていて、フレームを縦に均等に3分割、横にも均等に3分割すると、4つの交点ができます。
そこに重要な要素を持ってくると面白いビジュアルになるというもの。
この構図を使ったのが、何とか普通の恋愛のようなことを試みようとするシーン。
コース料理でのデートが終わり、帰り際、女性を駅の地下道へ続く階段の手前まで送るんですが、2人をそれぞれちょうど交点の上となる左右に立たせた構図にしてあります。
このことによって2人の間に適度な距離ができる。
もし2人がフレームの中央にいたら、すでに親しい関係に映ります。
この適度な距離感があることによって、まだそこまで親密ではなく、あいまいな関係の2人がこれからどう展開していくのかという期待が高まります。
なんか見ていて、アーティスティックな絵作りをされる監督だなーと思って調べてみると、このイギリスのスティーヴ・マックイーン監督、アート系カレッジ出身で美術とデザインを学んでらっしゃる!
卒業後はビデオ・インスタレーションアーティスト、彫刻家、写真家として活動。
作品はテート・モダン、ニューヨーク近代美術館、ポンピドゥー・センターなど世界の美術館に収蔵されているそう。
どうりで…ですね。
シナリオも鑑賞者にゆだねる形が少しあるので、分かりやすい映画を求める方は? かもしれないんですが、積極的に想像力を働かせて映画の内容やアート作品に関わることが好きな方なら見て損はない気がします。
印象に残る映画なので、監督の他の作品も見てみたいと思います。
↓予告編