『秘密と嘘』(1996年 イギリス)
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えー、即興で?!
カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した家族のドラマ。
今朝の1日1映画は『秘密と嘘』(1996年 イギリス)を鑑賞。
ロンドンの下町の工場で働きながら娘と暮らすシンシア。
ある日、娘だと名乗るホーテンスという女性が連絡をしてきた。
黒人女性のホーテンスは、実の母親が‘白人’であることを知ったのだ。
惑いながらも、ホーテンスと会う約束をするシンシアだったが…。
家族をめぐる秘密と嘘が明かされていく様子を描いた、96年カンヌ国際映画祭でパルムドーム大賞を受賞した作品です。
すごくいい話。
すごくいい映画。
イギリスの家族の話なんですが、遠く離れたこの日本の地で育った私が見ても、ものすごく共感してしまう。
その人の過去が、現在にいかに及ぼすか。
キャストの配置も良くて…。
登場人物7人が、ちゃんと社会の縮図になっている。
(私は血縁、恋愛、家族関係がない写真館の助手ジェーン(エリザベス・ベリントン)の感情がなぜか見事にマッチしまして、彼女と一緒に泣きました)
それはなぜだろうと振り返ると、プロットやセリフはもちろんなんですが、細やかな演技や演出のせいなんだろうなと思います。
それぞれの登場人物が置かれた複雑な社会背景や私的背景が、非常に細やかに演技や美術(衣装、小道具、部屋の飾りつけなど)で演出してあって、その一つ一つが1つの作品として集約された時、ものすごい説得力を持って迫ってくるんですよね。
で、見た後に知ったんですが、この映画、徹底した「リハーサル」と「即興演出」でリアルに描き出すという方法で撮影されたそう。
セリフは分かりやすいので意外だなーと思ったんですが、確かにキャストの関係性をここまで見事にまとめ上げるには、演者は気持ちがその登場人物とイコールになっていないと作り上げられない。
リハーサルでリー監督は、脚本から入るのではなく、まず人物像を探るために彼らが知っている人々について会話するように促しました。
ある程度の人物像が見えてくると、さらにその人物の深いところまで掘り下げるように要求。
セリフを覚えて台本の通りに正しく言う、というのとは逆の順序で、台本を覚える前に人物像を作り上げていく手法は、リー監督にとって重要なプロセスなんでしょうね。
確かにね、見ていて、主人公のシンシアがフィルムに映ってないところでどんな生活をしているかまでが透けてみえるくらい分かるんですよ。
セリフがないシーンでも、その表情でその人が何を考えているのかわかるんです。
その他の人物もしかり。
見る者にも深ーーーく伝わる。
即興というと、自由で観客には伝わりにくいというイメージがありますが、準備段階で徹底してその人物を理解することは、観客を裏切らないし、逆に観客によりよく伝わるということを学びました。
私も人生の節目を迎えて、これからどう生きていくかというのを考えてい時期ではあるんですが、そういう人にも、若い人にも、登場人物の誰かに共感できるような気がします。
↓予告編