『ウェンディ&ルーシー 』(2008年 アメリカ)
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犬、孤独、旅の途中で起こる出来事。
シンプルだけど深いロードムービー。
今朝の1日1映画は『ウェンディ&ルーシー 』(2008年 アメリカ)を鑑賞。
ほぼ無一文のウェンディは、愛犬ルーシーと共に新しい生活を始めるため、仕事を求めてアラスカへと向かっている。
しかし、途中オレゴンのスモールタウンで車が故障。さらに警察に連行されてしまい、ルーシーは行方不明に……。
先日見た『ミークス・カットオフ』の女性監督、ケリー・ライカートの作品です。
ポン・ジュノが「映画史に名を刻むべき最も美しいオープニングシーンのひとつ」としたと聞き、これは見てみようと思い、鑑賞。
なるほど、確かに印象的なオープニングです。
このオープニングシーンは、後で何につながっていくんだろうと思わせる「推進力」のある作り。
映画のオープニングで重要なのは、その続きを見たいと思わせるかどうか。
見終わって面白かった作品って、おおむねオープニングが印象的なんですよね。
内容は非常にシンプルなお話。
お金がなく、職を求めて旅をしている途中に災難が起こります。
とことん不運なんですが、運というよりも選択肢として不運な方向にしか行けない行き詰まり感が漂う。
登場人物は主人公と飼い犬、その他はちょこっと出る人も含めて5~6人。
派手な音楽もカメラワークもなく、ぱっと見、自主映画的ではあるんですが、その根底に「女性の貧困」という辛い現実が見えるんです。
主人公の行動、衣装、ヘアメイクの端々すべてに醸し出されている。
実際、主演のウエンディを演じたミシェル・ウィリアムズは監督に化粧や爪切り、ムダ毛のお手入れをせず、撮影中に2週間髪を洗わないように頼まれ、車の中で数晩眠るというメソッド演技を取り入れたそう。
説得力がある演技で、主人公の気持ちが痛いほど分かるんですよね。
映画の技法としては、「3分割法」を用いて人物等を配置していて、非常に印象に残る構図。
「カメラの距離&動き=心の距離&動き」も取り入れてあり、配色はエンジとダークブルーグリーン。(エンジ色の88年製ホンダアコードも印象的)
映画だと『万引き家族』『サリヴァンの旅』なんかを連想させるシーンがありますね。
もう一人の主役は犬。
心の友といえる犬と人との関係や、犬を飼うことについてもすごく考えさせられる。
シンプルなのに深い視点を持った、余韻のある映画です。
↓予告編