『アメリ』(2001年 フランス)
Fair use, Link
私、変わってるかも? と思う人が見ると救われます。
今朝の1日1映画は『アメリ』(2001年 フランス)を鑑賞。
神経質な両親の元で育ち、空想の中で遊ぶのとこっそり悪戯するのが得意になったアメリ。
22歳になり、モンマルトルのカフェで働く彼女は、青年ニノに出会って心ときめくが、どうしたらいいか分からず…。
そこであっと驚く悪戯を仕掛けると…。
ジャン=ピエール・ジュネ監督がパリ・モンマルトルを舞台に、パリジャンの日常を描き、フランスで国民的大ヒットを記録した作品です。
公開当時、劇場で見てるんですが、今回20年ぶりに見て、あれ? 思ってた内容と違う…って思ったら、アメリ役のオドレイ・トトゥが次に出た『愛してる、愛してない…』(2002)と勘違いしていました。
カラフルな配色以外はほぼ忘れているので初見ぐらいの気持ちですが、すんごい変わった世界観で、映画というよりなんだろう、コントとアートとMVをごちゃごちゃ混ぜて出来上がった実験的なラブストーリーといいますか。
非常に個性的です。
登場人物も超個性的。
アメリは空想少女だし、両親、カフェの店員、客、近所の八百屋の男の子、隣の骨折絵描き老人、好きな男の子も写真ボックスの失敗写真を集めるマニア…。
どうやったらそんなキャラやエピソードを思いつくの?! っていうくらいの個性的な面々が集結していて、松尾スズキの芝居とかアニメやコントを見ているよう。
一風変わった人ばかりで、普通の人が出てこないので、そのままだと普通の観客にはなかなか共感できない世界観なんですが、監督はそれをぐいーっと観客側に寄せる魔法を使っています。
その1つが「第4の壁」の突破。
普通の映画では、物語に観客は存在せず、スクリーンの中だけで話が進行しますが、この主人公アメリはカメラ目線で私たちに話しかけてきます。
そのことによって、アメリと映画を見ている私たちの間に親密さが生まれ、アメリの突飛な行動を応援したくなってくる。
また、ナレーションでアメリの人生を高速カットで笑いを入れつつ説明してくれることにより、突飛な行動の理由や心境を理解できる。
イエローのフィルターが欠けられた画像に、赤と緑が強調されたインテリアや衣装。
パリのモンマルトルというフランスの中でも移民の多い街で暮らすさまざまな価値観を持つ人々…。
画面に映っている情報量が多いので、混乱してくる部分はあるのですが、それらの技法によってストーリーの主軸をしっかりさせているので、ブレないですね。
その他の技法もたくさんあって、ホイップズーム、ズームアウト、クレーン、足元でのステディカム、アニメーションとの合成で心情を表す、回転…etc。
空想の世界を映像化するとおとぎ話のようで、非常に面白いです。
音楽は曲としてはアコーディオンの3拍子の曲がメインなんですが、意外なのは効果音。
一見おしゃれ系映画なんですが、その効果音のほとんどがサスペンスに使われているような刃物が切れるような「シュワン」とか衝撃音の「ドン」みたいな恐怖系なんですよね。
皮肉っぽいシーンもたくさんあるし、空想の世界には恐怖もつきものなので、そのあたりがうまーく表現されていて、面白いです。
変わった主人公が好きになる。
見ていて自分の中の変わった部分を認めてあげることができる、自己肯定感を上げることができる映画です。
↓予告編