『恋するベーカリー』(2009年 アメリカ)
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素敵な家、料理など「背景」が語る
大人の恋愛映画
今朝の1日1映画は『恋するベーカリー』(2009年 アメリカ)を鑑賞。
3人の子供を立派に育て上げたシングルマザーのジェーン。
カルフォルニアで有名ベーカリーを経営している。
仕事もプライベートも充実しているが、なにか心が満たされない。
そんなある時、ジェーンは10年前に別れた元夫の弁護士ジェイクと再会し……。
メリル・ストリープ主演の、大人な女性が繰り広げるラブコメディーです。
1人の女性に2人男性が恋をする非常に分かりやすいシナリオ。
コメディー要素が高く、女性も男性も下ネタからハッパまで開放的に話をします。
カルフォルニアを舞台にしたのもうなづけますね。
監督は女性のナンシー・マイヤーズ。
監督の作品は1930~40年代のスクリューボールコメディをベースに、裕福で成功した独立した女性が主人公となることが多く、この主人公も家を増築するくらい、女性として成功している人物。
いわゆるフェミニズム的な観点といえばそうなのかもしれないんですが、女性の自己実現と愛の達成が描かれ、女性が憧れるようなシーンがたくさん出てくるんですよね。
その一つが誰もが憧れる美しいキッチンやおいしそうな手作りの料理。
料理がメインの話でもないんですが、心の豊かさの象徴するように料理が出てきて、主人公の内面を描いています。
また、主役1人の目線で進んで行くのではなく、主要登場人物と、背景、美術、衣装など、そのフレームに映りこんでいる物すべてが意味を持ち、語っている。
構図的にも主役以外に目線を動かせるような「三分割法」によってセットがうまく配置され、絵画のような映画でもある気がします。
シーンで印象的なのは、ファーストカットで目に飛び込んでくる一面の「屋根」。
茶色い、特徴的なちょっと丸みを帯びたフォルムの屋根しか映っていないカットで、普段屋根のみをここまで観ることがないので、すごくインパクトがあります。
それをだんだん引きロングショットにしていくことで、その場所がどこか分かる。
そして、その屋根も伏線になっていて、のちに物語に関係があることが分かります。
プロの映画を見ていると、この一見意味のなさそうな捨てカット(状況説明)もあとですべて回収されて、意味があるということが分かり勉強になりますね。
また、50代後半に訪れる悩みや人生の節目、周りの人々との距離もリアル。
若い女性と再婚した元夫が、不妊治療や食べ物の好みの違いでストレスを抱えているシーンや、主人公が女友達に話す、50代後半の恋愛や性についても赤裸々ですごく面白いです。
セリフにも比喩や皮肉が効いていて、ちょっとおしゃれなんですよね。
個人的には主人公の心情を表すようにその都度衣装が変わり、衣装表現とおしゃれのヒントを得ました。
人生いろいろでも前向きに生きていく主人公に憧れと勇気をもらえる映画です。
↓予告編