『戦火の馬』(2011年 アメリカ)
数奇な運命を生き抜く馬をスピルバーグが描く。
きっと馬が好きになります。
今朝の1日1映画は『戦火の馬』(2011年 アメリカ)を鑑賞。
英国の貧しい農家で、少年アルバートに愛情深く育てられた美しい馬、ジョーイ。
第一次世界大戦が勃発。
ジョーイは軍馬として最前線へ送られる。
様々な人々と出会いつつ、フランスからドイツへ。
敵と味方の隔てを越えてジョーイは馬主の間を移っていく。
その頃、年月を経て屈強な若者に成長したアルバートは、一兵士として砲弾轟くフランス激戦地の塹壕に身を潜めていた…。
アカデミー賞作品賞他6部門ノミネート、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督による大作です。
前情報なく見たんですが、文芸作品のようなタイトルなので、もっとおとなしいドラマかと思いきや、スケール感の半端なさと、超エンターテインメントのオンパレード。
監督がスピルバーグと聞いてなるほどと思いました。
冒頭で、農作物を育てるためにお父さんがなけなしのお金で農耕馬を買いに行くんですが、農耕馬としては使えないサラブレッド馬を「いい馬だ」と言って買ってくるところがもう、妻からすると「はぁ? 何考えてんのよ、お父さん!!!」ってなる。
この「いらないものをノリで買ってくるお父さん」の図がもう「あるある」として笑えて笑えて。
でもその美しい馬は息子にとっては欲しかった馬で、なんとか手名付けて農耕馬として働かせようと試みるんですけどね。
お父さんも過去の軍隊時代の栄光がひも解かれて、「酒飲みでいらんものを買ってくるお父さん」のイメージは払拭されます。
そういった冒頭の「緩」と、だんだん後半になるにつれて弾や大砲が飛び交う戦争の最前線でいろんな人の手に渡っていく馬の運命「急」のクレッシェンドが見事。
ジョン・ウィリアムズの音楽も場面を盛り上げます。
スピルバーグって人の感情を操る魔術師だなぁと改めて実感。
馬が主役と言ってもいいほどのこの映画、アメリカやヨーロッパの映画を見ると、馬に対する思い入れや関係性が深く、人生のパートナー的存在ということがよく分かります。
映画では300の馬を使用していて、主役の馬は14頭の異なる馬を用意。
馬の動きや表情を捉えたショットも多く、だんだん馬が可愛いと思えてくるんですよね。
技法としては、馬の目を超アップにして、反射して映り込んでいる人間の動きをシーンとして魅せるところや、ゴールデンアワーで郷愁を生み出しているところに注目。
重要なシーンをあえて見せず、風車の羽根が回ったときに羽根越しに見える、というような表現も面白いです。
日常生活で馬に出会える機会はなかなかないですが、馬に会いに行って見たくなる映画です。
↓予告編