『少年は残酷な弓を射る』(2011年 イギリス)
母親と息子の関係を緊張感をもって描く
サイコスリラードラマ
今朝の1日1映画は『少年は残酷な弓を射る』(2011年 イギリス)を鑑賞。
自由奔放に生きてきた作家のエヴァは、キャリアの途中で子供を授かった。
ケヴィンと名付けられたその息子は、なぜか幼い頃から母親のエヴァにだけ反抗を繰り返し、心を開こうとしない。
やがてケヴィンは、美しく、賢い、完璧な息子へと成長する。
しかしその裏で、母への反抗心は少しも治まることはなかった。
そして悪魔のような息子は、遂にエヴァを脅かす出来事を起こし…。
カンヌ国際映画祭作品の深淵な親子の関係を描いたサイコスリラードラマです。
ストーリーは非常に深刻で、息子と母の関係性や子育ての悩みが主。
生まれながらにサディスティックな面を持つ息子を、どう育てればいいのか。
私も見終わって考えるんですが、答えは出ません。
母親としての苦悩を、彼女の心情を表すような色や明暗を強調した映像で表現してあります。
映画は「つかみ」が重要といいますが、鮮烈な「赤」のイメージによって、冒頭から非常に心をわしづかみに。
主人公の女性の現在の様子と同時に、彼女の過去に何があったのかを回想でひもといていく流れです。
衝撃的な部分や重要な部分は描かれずに、その前後を描いてあり、想像で補う感じがあるので、少し分かりづらい感じも。
ですが、登場人物たちは普通とは逆の行動を行い、どのシーンもハッとさせられるような予想を裏切る展開があり、鑑賞者の度肝を抜くためのシナリオは秀逸ですね。
また、画的に、別の何かを連想できるような象徴的な小道具がたくさん出てきて、メタファーが効いているのも特徴的。
あ、これはこういうことだなというのを想像しながら進むのも面白いです。
技法として特徴的なのは、心情の揺れを表したような「手持ちカメラ」もあるんですが、照明が主光源の「キーライト」と二次光源の「フルライト」を利用した斬新な手法。
カフェで一人思い悩む主人公を、窓からの赤い光と、店の蛍光灯の光を半々に当て、孤独と悲しみの中にいる場面を作っています。
彼女の孤独や悲しみを、行動としてあからさまに描くのではなく、照明のみで表現するという、ある意味ミニマムな手法ではあるんですが、これだけで彼女の内面を鑑賞者は十分くみ取ることができる。
照明って見落としがちなんですが、こういう作り方を知ると、映画表現の奥深さを感じます。
親は子に何が与えられるのか。
それを考えるきっかけになる作品です。
↓予告編