『トゥモロー・ワールド』(2006年 イギリス・アメリカ)
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まるで戦場ドキュメンタリー
「長回し」による臨場感がものすごいSFアクション
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
今朝の1日1映画は『トゥモロー・ワールド』(2006年 イギリス・アメリカ)を鑑賞。
西暦2027年。
人類は18年間の長期に渡って子どもが生まれない未曾有の異常事態が続いている。
このままでは人類絶滅の危機は免れなかった。
そんな中、国家の仕事に就くテオ(クライヴ・オーウェン)が、人類存続に関係する重要な情報を握り始める。
人類の未来はおろか自分の将来でさえ興味を示さないテオだったが……。
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のアルフォンソ・キュアロンが描く超大作です。
SFということだけで前知識なく鑑賞。
宇宙とかエイリアンとかそんな感じなのかと思ったら、まーーーーったく違っていました。
まるで「戦場ドキュメンタリー」。
18年前から子供が生まれなくなった世の中に、妊娠している不法移民の女性がいた…。
警察や反政府グループから彼女と新しい命を守るため、あらゆる攻撃に立ち挑んでいく物語です。
いわゆる平凡な男性が難題に直面する巻き込まれ系映画なのですが、この映画の巻き込まれ方は非常に現実的。
銃弾が飛び交う戦場の最前線に直面します。
この映画のすごいところは主要な場面で「長回し」が使用されていること。
カメラが主人公のあとを追うようについていき、鑑賞していてまるで主人公と同じ体験をしているかのような臨場感が味わえます。
銃弾が飛び交う戦場の最前線では、銃弾に当たるかもしれない不安と闘いながら、物陰から物陰へと伝い渡るように逃げるシーンなんて、もうドキドキです。
その分撮影ではタイミングが重要で、演劇の立ち回りのように、Aさんがここまで来たら、Bさんが飛び出して撃たれ、ここで犬が通り過ぎ…とすべてのタイミングを設計しなければならない。
長回しどうしをカットを分からないようにつなげて、さらに長い長回しにしてあったりもしますが、監督&撮影監督の根気ある作業がこの名シーンを生んでいるんでしょうね。
あちこちで起こる暴動、犬や鶏、山鹿などの動物も荒廃した街を闊歩し、血の飛び散りがカメラのレンズについてもそのまま撮影を続けるリアルさ。
生命の誕生や人間の死を、信念や運命、キリストやマリアなどに例えてあり、人間が貴重な存在になったときに、戦争で殺しあう必要があるのだろうかということ感じます。
2006年制作ですが、今まさに繰り広げられている社会問題をドキュメンタリータッチで身近に見せる、優れた作品だと思います。
↓予告編