『ボニーとクライド/俺たちに明日はない』(1967年 アメリカ)
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壮絶な青春を描いたニューシネマの先駆的傑作。
今朝の1日1映画は『ボニーとクライド/俺たちに明日はない』(1967年 アメリカ)を鑑賞。
ケチな自動車泥棒だったクライドは、気の強いウェイトレスの娘ボニーと運命的に出会い、コンビを組んで強盗をやりはじめる。
二人は順調に犯行を重ねていくが……。
不況時代のアメリカ30年代に実在した男女二人組の強盗、ボニーとクライドの凄絶な生きざまを描いたアメリカン・ニューシネマの先駆けとなった犯罪ドラマです。
まず「アメリカン・ニューシネマ」をおさらい。
1960年代後半から1970年代半ばにかけてアメリカでベトナム戦争に邁進する政治に対する特に戦争に兵士として送られる若者層を中心とした反体制的な人間の心情を綴った作品のこと。
40年代までや70年代以降のアメリカ映画は、夢と希望があふれ、主人公が「生きのびるため」に頑張る作品が支持されていますが、この時代の「アメリカン・ニューシネマ」の主人公は真逆で、若者が絶望し、追い込まれるものが多い。
ベトナム戦争という若者の命を奪うことがリアルに起こっている時代。
映画では、体制から何とか抜け出したいともがくんですが、国家や体制側が彼らを駆逐する。
当時のアメリカの世相を投影した内容が多いです。
そういう中ではありますが、若い監督による新しい感覚や手法が次々と生まれていった時代でもあり、この映画にもそれまでリアルに描かれていなかった「血」や「セックスの悩み」なども。
死を意識すると生きることが明確になるといいますが、この映画でも、犯罪を犯しながらも、死と背中合わせになりながら一生懸命生きている姿が描かれ、そこはグッとくるものがあるんですよね。
音楽は、映画の内容を俯瞰するかのようなめちゃくちゃ明るいバンジョーのカントリー音楽で、皮肉に満ちています。
改めて思うのは、映画における「皮肉」って大事ですよね。
それがあるのとないのとでは、映画の深みのようなものがまるで違ってくる。
この映画は全般的に皮肉にあふれた映画ともいえると思います。
技術的に印象的なのは、衝撃的なラストシーンにおいて使用されている「スローモーション」。
実際には数秒間で終わるあっけないことも、スローモーションでゆっくり見せることにより、その瞬間が劇的になり、記憶により鮮明にとどめることができる。
この映画の強烈なラストシーンがもしスローモーションじゃなかったら…と考えるとあっけない。
スローモーションの効果は絶大だなーと感じます。
キャストとして印象的なのはボニー役のフェイ・ダナウェイ。
1930年代の葉巻やタバコをくゆらすかっこいい女性を演じさせたらピカイチなんですよね。
1930年代を舞台にしたミステリー『チャイナタウン』でも素敵な姿を見ることができます。
あとワーキャー騒ぐ兄の妻ブランチ(エステル・パーソンズ)はシナリオ的においしい役。
アメリカン・ニューシネマには学ぶことが多いです。
↓予告編