『エレファント』(2003年 アメリカ)
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カンヌ受賞作。
米コロンバイン高校の銃撃事件が題材のドラマ。
今朝の1日1映画は『エレファント』(2003年 アメリカ)を鑑賞。
米コロンバイン高校の銃撃事件を題材にした、ガス・ヴァン・サント監督がカンヌ国際映画祭でパルムドールと監督賞を受賞したセンセーショナルな一作。
事件の当日、生と死の運命を分けることになる高校生たちの日常を追いかけながら、加害者2人が犯行に至るまでのドラマが進行していきます。
1999年4月20日に米・コロンバイン高校で2人の高校生が銃を乱射し、15名死亡(教員1名、容疑者2名を含む学生14名)、24名負傷という痛ましい事件を取り扱ったこの映画。
ドキュメンタリー版のマイケル・ムーア監督『ボウリング・フォー・コロンバイン』は劇場で見たんですが、こちらのフィクション版は初鑑賞です。
ボウリング~の方は、銃社会がテーマでしたが、こちらは高校生の微妙な心理を描いた、静かな恐怖がある映画。
フィクションではありますが、ドキュメンタリータッチで非常に日常的です。
映画らしい、派手な演出はない。
酔った父親の代わりに運転する男の子、写真部の男の子はカップルを撮影して暗室で現像、恋愛とゴシップが大好きな女子グループは廊下で立ち話など当たり前の日常の高校生たちの姿が映し出されます。
加害者となった高校生2人も、ピアノを弾いたり、シューティングゲームをしたりと、当たり前の日常がある。
そこにある日、悲劇はやってきます。
雲がゆっくりと形を変えていくように、彼らもゆっくりと心模様が変化していく。
被害者と加害者にはそこまで差がなく描かれていて、日常に潜む怖さ、孤立、怒りみたいなものが浮き上がってきます。
この映画の効果としては「アマチュア」と「トラッキングショット」。
プロの役者ではなくあえて素人をキャストに起用し、台本も当日渡しで即興的に演じている。
それによってどこにでもありえることとして生々しい空気を感じることができます。
また1シーン1カメぐらいで、カットをあまり切らず長回しで登場人物を背後から追っている。
日常のように動いてもらい、そのまま撮影することにより、当時何がそこで起きていたのか、その場の人たちはどういう動きをしていたのかを把握でき、登場人物の心理や置かれている状況が伝わってきます。
証言をつなぎ合わせて1作にするというのはかなり大変だと思うんですが、そこを上手く映画として想像力を掻き立てるような動き、セリフ、音楽、インサートカットが入れてあり、見ごたえがあります。
こういった事件、ちょっと日本でも増えてきている分、他人事ではない怖さがありますね…。
↓予告編