「ヘイトフル・エイト」(2015年 アメリカ)
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鬼才タランティーノ監督が描く
南北戦争の縮図。
今朝の1日1映画は「ヘイトフル・エイト」(2015年 アメリカ)を鑑賞。
クエンティン・タランティーノ監督の長編第8作。
大雪のため閉ざされたロッジで繰り広げられる密室ミステリーを描いた西部劇。
南北戦争終結から数年後の冬、全員が嘘をついているワケありの男女8人が、雪嵐のため山小屋に閉じ込めらる。
そこで起こる殺人事件をきっかけに、意外な真相が明らかになっていくが…。
巨匠エンニオ・モリコーネが担当し、第88回アカデミー賞で作曲賞を受賞。
70ミリフィルムで撮影されたワイドスクリーン作品。
タランティーノ監督ということで、血がドバーッや、人間のパーツが吹っ飛ぶぐらいの残虐シーンについては、園子温監督作品を見る前と同じくらいの心の準備をして鑑賞しました。
案の定、血がドバドバです。
でも、ただのグロい作品というのではないのがタランティーノ監督。
黒人差別、リンカーン大統領暗殺事件などを象徴的に織り込んであって、かなり深いです。
『タイタニック』が船の中での「貧富の差を描いた密室劇」とすると、『ヘイトフル・エイト』は、店という密室空間で、黒人差別解放のため黒人が白人と戦う「南北戦争の縮図」のよう。
店を南部と北部に分けるシーンがあったり、「奴隷解放の父」と呼ばれるリンカーン大統領と文通をしているという設定があったり、人々の死に方もリンカーンの側近の人物と似ていたり…。
推理劇というドキドキする面白さと、おなじみのアクションを展開する中に、歴史的背景をきちんと入れ込んであって、かなりグロいのに、見終わった後にじんわりするんですよね。
みんなでシチューをものすごくおいしそうに食べるシーンがあるんですが、南北戦争前だと黒人と白人が同じテーブルでご飯を食べることはなかったと思うので、これは進歩の証ですよね。(それ以前の時代設定の映画では、黒人は馬小屋とかに追いやられているので)。
美術は日本人の種田陽平(キル・ビル以降、あらゆる美術を手掛けている方)。
色の配色とか、壁にぶら下げてあるものとか、ついつい見てしまってなるほどと思わされます。
映像の技術としては「スプリットジオプター」という、1つの画面に映った手前と奥にいる人物にどちらもピントを合わせる技術が。
密室の中で誰が犯人なのかを推理させるために、全員の表情を見逃さないようにという演出です。
その他、吐く息の白さを強調した照明、天候の違いで日付を分からせるなど、細部まで徹底的にこだわっているのが伝わってきて、スタッフの映画愛を感じる作品です。
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